「税務調整」など法人税の計算の仕組みをわかりやすく税理士が解説
法人税等は、会社の利益にかかる税金です。
ただし、会社が作成した決算書(会社の利益などを計算した書類)の利益に、そのまま税率をかけるわけではありません。
「税務調整」など、複雑な仕組みとなっています。
なぜなら、会計には会計の目的とルールがあり、税法には税法の目的とルールがあるからです。
今回は、法人税がかかる利益がどのように計算されるのかを確認していきます。
法人税等は会社の利益にかかる税金
法人税等は、会社が1年間に稼いだ利益に対してかかる税金です。
利益は、売上から商品の仕入れ原価、人件費、家賃などの各種経費を差し引いて計算します(いわゆる手残り)。
金額的には、利益のおおよそ2割から3割が法人税、法人住民税、法人事業税等としてとられ、これらの税金をあわせて「法人税等」と呼んだり、代表して「法人税」と呼んだりします。
決算書の利益に税率をかけるわけではない。税務調整が必要
決算書とは、会社の財産状況(今いくらのお金があるのか)や1年間で稼いだ利益を計算した書類です。
決算書(損益計算書)上の利益は、会社の売上から商品の仕入れ代金、各種経費などを差し引いて計算を行います。上記で言うと、一番下の「当期純利益」が、会社が1年間で獲得した利益です。
なお、決算書は様々な目的で作成され、用途が幅広いです。例えば株主への報告のため、銀行からの融資を受けるため、或いは会社の経営判断のサポート資料として使われます(詳しくは「会社設立後に必要なこと – なぜ決算書を作るのか」の記事をご覧ください)。
投資家が他社の決算情報と比較できるようにするため、業績を良く見せ、銀行から好条件でお金を借りるため、経営判断に役立てるため。様々な思惑から決算書が作成されるため、決算書の作成目的によって利益額が異なることがあります。
一方で税金は、支払う力がある人や、稼いでいる人に支払ってもらいたい(全国民の負担感が公平になるように)という思惑があります。
従って、様々な目的で作成された決算書の利益に対してそのまま税率(利益に対して税金がかかる割合)をかけるわけにはいきません。
決算書上の利益を、税金計算を行うための利益に修正する作業「税務調整」が必要です。
「税務調整」を行い、「税金がかかる利益」を計算する
法人税の申告書を作成する理由は、会社の利益に税務調整を加え、税金計算上の利益を計算するためです。
上述したように、法人税等の税金は、会社が作成した利益にそのまま税率をかけるわけではありません。
もしそれが認められるのであれば、意図的に経費を上乗せする人が増えてしまうからです。
たとえば以前「社長の賞与は経費にならない?」の記事でご紹介した役員の給料です。
役員の給料は、中小企業であれば容易に増減させることができます(つまり、利益を簡単に増減させることができます)。
そうした場合、利益の全てを給料で削ってしまった場合には法人税がほとんどかからないという事態が生じてしまいます。
従って、役員の給料をむやみに増減させた場合は、給料の一部が経費として認められないという法人税の取り扱いがあります。
例えば、決算書上の利益が100万円、経費としてみとめられなかった役員の給料が10万円あった場合、100万円+10万円 = 110万円が、税金がかかる利益(所得)となります。
決算書(PL)の利益 | 100万円 |
(+)加算 | 10万円 |
(-)減算 | – |
税金計算上の利益(課税所得) | 110万円 |
上記のように、決算書の利益について、会社が計上した経費が税金計算上認められる経費かどうか等の観点から調整を加え、税金計算上の利益を算定します。
この税金計算上の利益を算定後、税率をかけることによってようやく支払うべき法人税を計算することができます。
申告書の種類はかなり多い
なお、上記で紹介した申告書は、膨大な種類の中のたった1枚です。
国税庁のWebページに法人税の申告書の全種類がアップされていますが、膨大な種類があります。ただし、一度の申告で全て使うわけではありません。
小規模な会社で10種類~20種類程度、大きな会社であっても30種類ぐらいが一般的でしょう(法人税だけでなく、法人住民税や法人事業税の申告書も含めると、より枚数が増加します)。
なお、税理士であっても、全種類を見たことはともかく、実際に作成した経験がある人は日本中を探しても恐らく1人もいないでしょう。
そのぐらいレアケースなものも多く、膨大な種類が存在します。
関連記事です。
役員の給料はむやみに増減させると、税金面で損をするケースがあります。役員の給料をいくらにするべきかは税理士と相談しつつ決めると良いでしょう。
注意事項 ※1 本記事は2019年8月現在の法令等に基づき記載しています。 ※2 本記事は一般的なケースに基づき記載しています。実際の申告等にあたっては顧問税理士等へご相談ください。 ※3 本記事に記載された内容に従って行動された結果生じた損失については、弊社では一切の責任を負いかねます。
投稿者プロフィール

- 【プロフィール】
一般社団法人 全国第三者承継推進協会 理事
税理士
【寄稿実績など】
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【メディア出演実績】
01CHANNEL(株式会社ウェイビー運営)
税理士2.0 AKIRAチャンネル(レッドスターコンサルティング株式会社運営)
TAKA World Peace(株式会社グローバルマーケット運営)
【著書】
相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (2021年3月発売予定)
【メディア運営】
税理士による相続メディア:あんしん相続税 などを運営(合計:月間10万PV)
【経歴等】
業界最大手のデロイトトーマツ税理士法人の出身であり、売上高数千億円規模の外資系企業の申告や、個人資産百億円規模の方の税務相談経験も多数あり、創業から上場まで対応が可能である。
また、士業など専門家1,500人以上の団体「全国第三者承継推進協会」の理事に就任し、後継者不在の会社の第三者承継を推進している。
その他、Twitterでは1万人のフォロワーを有しており、経営者や士業が年間数百名参加する交流会を開催している。
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