遺言書は何歳から書くべきか
元気だし、まだ若い。
死後のことは考えたくない。遺言書はいつでも書けるし、後回しにしたい。
その気持ち、わかります。
しかしながら、遺言書はなるべく若いうちに作成することが望ましく、遺言書を書くべきタイミングを逃した場合、結局遺言書が無いまま亡くなってしまい、親族間で争いが起きるケースも少なくありません。
今回は、遺言書を作成すべき年齢について確認していきましょう。
遺言書が無いと親族間で争いが起きる
人が亡くなった場合、故人の財産は親族間(相続人)で分け合うことになります。その際、遺言書が作成されている場合は基本的に遺言書に従い、財産を分けることになります。
一方、遺言書が無い場合は親族間で話し合い(遺産分割協議)が必要になります。
相続で揉めるのは、概ね、この話し合いが必要になるケースです。親族間で話し合いが必要になる場合、故人の気持ちのみでなく、介護に携わったか、過去に親から資金援助を受けていたか等、相続人の個人的感情が入り混じります。これが相続で揉める大きな原因であり、遺言書が無い場合は争いが起きる可能性が高くなります。
財産が少ない方が揉めやすい
相続のご相談にいらっしゃる方は「うちにそんなに財産は無い」。
そう仰る方が多いです。
財産が1億円、2億円あっても「うちには財産が無い」と仰います。もちろん、財産が1億円あれば通常は相続税の申告が必要であり、また、相続税の支払いが必要です。しかし、皆さんの中では「財産が無い」のです。なお、財産が多ければ、ある程度皆が納得してわけることができる場合があります。例えば財産が10億円ある場合、10分の1の1億円もらえれば納得する方もいるでしょう。
一方で、財産が1,000万円の場合だと10分の1では100万円です。もらえる財産が少ないと、より多くの財産を求めて喧嘩が起きる可能性が高くなります。うちはそんなに財産が無いから遺言書は必要ない、という考えは極めて危険です。
財産規模を問わず、亡くなる前に遺言書を作成することが求められます。
遺言書は認知症になる前に書かなければならない
遺言書は亡くなる前に書けば良い。いつでも書けるから後回しにしている。
そう考えていると危険です。
なぜなら、遺言書は亡くなるまでではなく、認知症になる前にしか書けないためです。正確には、書くこと自体はできるかもしれません。しかし、遺言書を書けたとしても判断能力が無いため、法律上、書いた遺言書が無効になる恐れがあります。
遺言書は、作成しても無効になってしまえば親族間での話し合い(遺産分割協議)が必要になります。遺言書に、長男に全財産を渡すと記載があれば、他の兄弟から遺言書の無効を主張され、揉めることになります。
遺言書は、認知症になる前に作成を行わなければなりません。
認知症は何歳ぐらいから発症するのか
65歳以上の方の、およそ5人に1人は認知症であると言われています。
5人に1人、少ないと感じる方もいるでしょうし、多いと感じる方もいるでしょう。しかし、65歳未満の方でも認知症になる可能性があり、また、70代、80代になれば認知症になる確率は高くなります。
遺言書をいつか書こうと考えていると、手遅れになってしまう可能性があるため注意が必要です。認知症になった場合は契約などの法律行為に制限がかかり、遺言書を書くこともできなくなります。また、もちろん、交通事故や台風などの天災で亡くなる可能性も0ではありません。遺言書は書き直すことも可能なため、60歳代であっても一度書いておくことが望ましいでしょう。
60歳や65歳、定年退職時が一つの目安
サラリーマン生活が終わり、定年退職した際は会社から退職金が入ります。また、サラリーマン生活が終われば、老後の財産状況についてある程度見通しが立つでしょう。
退職金が入った段階で、亡くなるまでに必要な資金はある程度見えてきます。従って、早いと感じるかもしれませんが、定年退職時が遺言書を作成する時期の一つの目安となります。
70歳、80歳になった際、遺言書を書き換える必要に迫られるかもしれませんが、遺言書の作成や相続税の対策は、早いうちから進めた方が大きな効果を生むことができます。従って、遺言書を作成するのが60歳代であっても、早すぎるということはありません。
最後に
繰り返しですが、遺言書はいつまででも書けるわけではありません。認知症になる前、元気なうちにしか書けません。
奥さん、旦那さん、そして子どもや孫に負担をかけないためには、遺言書をできる限り若いうちに作成することが求められます。
なお、ブラッシュメーカー会計事務所では、相続税に関するアドバイスはもちろん、遺言書の作成のサポートも行っています。遺言書を書きたい、うちの家庭で相続税がかかりそうか等、まずは漠然としたご相談でも構いません。提携の弁護士や司法書士などの専門家とともに、円満な相続をサポート致します。まずはこちらから、お気軽にお問い合わせください。
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遺言書を作成しても、法律のルールに従っていなければ無効となってしまいます。遺言書を作成する場合、ご自身での作成はなるべく避け、専門家のサポートを入れることをお勧めします。
遺言書をご自身で作成した場合、現在の法律ではご自身で保管しておく必要があります。家族仲があまり良くない場合は破り捨てられる可能性があり、また、保管場所によっては遺言書を見つけてもらえない可能性もあるため注意が必要です。
相続税とはどのような税金か。いくらぐらい財産があると税金を支払わないといけないのか。相続税の基本的な仕組みについてご紹介しています。
注意事項 ※1 本記事は2019年10月現在の法令等に基づき記載しております。 ※2 本記事は一般的なケースに基づき記載しております。実際の申告等にあたっては顧問税理士等へご相談ください。 ※3 本記事に記載された内容に従って行動された結果生じた損失について、弊社では一切の責任を負いかねます。
投稿者プロフィール

- 業界最大手のデロイトトーマツ税理士法人を経て、ブラッシュメーカー会計事務所を共同で創業。 売上高数千億円規模の外資系企業の申告や、個人資産百億円規模の方の税務相談経験など、幅広い業務提供の経験を有する。
現在は代表の河野と共に、主にベンチャー企業・中小企業向けに税務相談・申告書作成や財務コンサルティング業務を提供し、また、自社Webにて120以上の記事を執筆している。
ブラッシュメーカー会計事務所は、東京・市ヶ谷にオフィスを構える税理士事務所です。
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