起業後に発生する思わぬ支払いについて起業に強い税理士が解説
日本政策金融公庫が新規創業者にアンケートを行った結果、約75%の企業が予想とは異なる支出があったと回答したというデータがあります。
起業する前には、どういう支払いがあるか想定されるでしょう。例えば商品の仕入れ代金、外注費や従業員の給料などが代表的ですね。それでは、他にどのような支払があるのでしょうか。
「開業前には知らなかった支出がある」:42%
起業する前には、どれぐらいの支出が発生しそうか予測をされるでしょう。仕入代金、外注費、人件費、家賃など。しかし、実際に開業してから、開業前の見込みと異なったという経営者は多いようです。
以下のグラフは、2011年に日本政策金融公庫が行ったアンケート結果です。支出に関し、開業前の見込みと異なったことがあるかという質問に対し、約75%の企業が予想と異なる支出があったと回答しています。
上記のうち、原材料や仕入れ価格が予想より高かったが25%、従業員の給料が思ったより高かった15%とありますが、注目すべきは一番下にある「開業前には知らなかった支出がある」の42%ですね。圧倒的に多いです。
開業前に知らなかった支出
開業前に知らなかった支出の中身としては、基本的に会社員時代は会社が負担してくれていて、支払わないといけないことを知らなかったものが多いようです。
日本政策金融公庫「2011年度新規開業実態調査」-2
開業前に知らなかった支出
1位、源泉徴収した所得税
2位、健康保険の事業主負担分
3位、厚生年金の事業主負担分
4位、固定資産税
5位、源泉徴収した住民税
となっています。
主に税金と社会保険料関係の支払いが想定外のようです。
開業前に知らなかった支出1位,5位:源泉徴収した所得税,住民税
開業前に知らなかった支出1位と5位の源泉徴収は、従業員に給料を支払う際の天引きです。
会社員の方が給料をもらう際、所得税や住民税が天引きされていますよね。
だいたい額面30万円であれば実際に振り込まれる金額は25万円ぐらい。この差し引かれた5万円部分が源泉徴収された所得税や住民税、後述する社会保険料です。
会社はこの差し引いた5万円部分を懐に納めているわけではなく、税務署などに支払う必要があります。
従って、従業員に給料を支払う際は、天引き分は会社のものではないということを認識しておく必要があります。
開業前に知らなかった支出2位・3位:健康保険,厚生年金の事業主負担分
開業前に知らなかった支出2位と3位は、健康保険・厚生年金の事業主負担分についてです。
これらは、いわゆる「社会保険料」と呼ばれるものです。
社会保険料も会社員の方は給料から天引きされています。
ただし、社会保険料は天引きされた税金と異なり、会社員の方が負担しているのは社会保険料の半分だけです。
本来支払うべき金額のうち、半分は従業員、もう半分を会社が負担しないといけないことになっています。
従って、例えば30万円の給料を従業員に支払い、5万円が天引きされ、うち4.3万円が社会保険料として天引きされていた場合、会社は倍額の約8.6万円の社会保険料を支払う必要があります。
つまり、従業員の給料の額面が30万円だとした場合、プラスで会社負担分4.3万円(つまり34.3万円)を支払わないと従業員を雇うことができないため注意が必要です。
開業前に知らなかった支出4位:固定資産税
「パソコン(pc)を買っただけで固定資産税がかかる」の記事でご紹介した固定資産税が、開業前に知らなかった支出第4位にランクインしています。
事業を行っている場合は、例えばパソコン、応接セット、机や椅子などを買っても固定資産税がかかります。
ただし、1単位あたり20万円未満の固定資産であれば、会計上のやり方によっては固定資産税の対象から外すことができます。
何もしていなければ固定資産税がかかってきてしまいますので、こういった時に顧問税理士がいないと損する可能性があるので注意が必要ですね。
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法人に関連する税金の年間スケジュールです。
これから事業を始める方はスケジュール感を把握しておくと良いでしょう。
税理士にはそれぞれ専門分野があり、様々な方がいます。
顧問税理士を探す際の参考指標をご紹介しています。
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税理士
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また、士業など専門家1,500人以上の団体「全国第三者承継推進協会」の理事に就任し、後継者不在の会社の第三者承継を推進している。
その他、Twitterでは1万人のフォロワーを有しており、経営者や士業が年間数百名参加する交流会を開催している。
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