【消費税経過措置】増税前後の期間にまたがる消費税率、工事の請負等を税理士が解説
消費税増税まで、あと1か月を切りました。
2019年10月1日以降に行われる取引は基本的に消費税率10%に引き上げられますが、飲食料品など消費税率8%が適用されるもの(軽減税率)もあります。
また、ただちに10%にならず、条件付きで消費税率8%が適用されるもの(消費税の経過措置)があり、消費税は非常に複雑な制度となっています。
今回は、
この記事では、2019年9月30日以前(増税前)と2019年10月1日以降(増税後)の両期間にまたがる取引や、消費税の経過措置にについて、税理士の坂根が初心者向けに解説します。
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消費税率8%から10%への引き上げ
2019年10月1日以降に行われる商品の販売やサービスの提供については、基本的に消費税率10%が適用されます。
それでは、仮に2019年9月30日以前(増税前)と2019年10月1日以降(増税後)にまたがる、1年間のサービス提供を行った場合、消費税率は8%と10%、どちらが適用されるのでしょうか。
この判断は慎重に行わなければなりません。
詳しくは、「なにが消費税率8%?消費税8%から10%への引き上げ(軽減税率)」の記事をご覧ください。
消費税の経過措置:増税前後1年間にわたって行われるサービス提供の消費税率
国税庁のパンフレットに、消費税増税前後にまたがる取引の取り扱いが記載されていますので、一部ご紹介します。
なお、全文の引用は行わず、簡単にまとめています。
経過措置は、「いつまでに行われた取引」と条件が決まっているものもありますので、詳細は原文をご確認ください。
1年間かかるサービス提供を行う場合の消費税率
参考:消費税率の経過措置Q&A(基本的な考え方編) 問6
【問】
2019年9月1日~2020年8月31日までの1年間のサービス提供を行う契約を締結し、1年間分の代金を増税前の時期(2019年9月1日)に受領しています。
その場合、消費税率は8%と10%、どちらが適用されるのでしょうか。
【答】
基本的に2020年8月31日(サービス提供完了日)に行われた取引と判断し、消費税率10%が適用されます。
つまり、2019年9月1日(消費税増税前)に代金を受領しているか否かは関係ありません。
消費税率は、モノの引き渡しやサービス提供の完了時点が2019年9月30日以前か、2019年10月1日以降かどうかで、消費税率8%・10%の判定を行います。
上記ご質問のサービス契約が、1年間を契約期間として年額料金を決めており、そのサービス提供が2020年8月31日に最終完了するものである場合、サービス提供の最終完了日である2020年8月31日を基に消費税率8%・10%の判定を行います。
つまり、ご質問のケースでは、サービス提供完了日である2020年8月31日(2019年10月1日以降の増税後)に行われる取引として、消費税率10%が適用されます。
ただし、中途解約しても返金しない等の一定の要件を満たす場合、消費税率8%を適用して差し支えありません。
なお、サービス提供を行う契約の内容等が、月々完了するものであり、中途解約した場合に未経過期間の代金が返金される場合は次の事例によります。
月ごとにサービス提供が完了する場合の消費税率
参考:消費税率の経過措置Q&A(具体的事例編) 問2
【問】
弊社は事務機器の保守サービスを行っており、保守サービスの契約期間を2019年10月1日~2020年9月30日(増税後)の1年間とする保守契約を2019年9月30日まで(増税前)に締結し、かつ、2019年9月30日までに1年間の保守料金を前もって受領しています。
なお、月々1万円として保守料金を決めており、中途解約した場合は未経過分の保守料金を返金することとしています。
この場合、増税前に受け取った保守料金についての消費税率は何%が適用されますか。
【答】
受け取った代金の全額について、消費税率10%が適用されると考えます。
先ほどの繰り返しとなりますが、消費税率はモノの引き渡しやサービス提供の完了時点が2019年9月30日以前か、2019年10月1日以降かどうかで、消費税率8%・10%の判定を行います。
ご質問の保守契約のように、保守料金が月々1万円と決められており、保守サービスが毎月完了するものの場合、実際に毎月のサービス提供が完了する時点の消費税率が適用されます。
したがって、本ケースにおいては2019年10月1日以降にサービス提供が完了するものであることから、受け取った代金の全額について消費税率10%が適用されると考えられます。
続いては、2019年10月1日以降にサービス提供等が完了する場合であっても消費税率8%が適用される、「消費税の経過措置」の取り扱いについて確認を行います。
消費税率8%の経過措置
上述したように、2019年10月1日以降に商品の販売やサービス提供が完了する場合、原則として消費税率10%が適用されます。
これは、代金を受領したのが2019年9月30日以前(増税前)であるか否かに関わらず、あくまでも商品の販売やサービス提供などの取引が完了した時点が9月30日以前か10月1日以降かで判断を行います。
ただし、そんな中にも一部例外があり、サービス提供等の完了が2019年10月1日以降になるものであっても、消費税率8%が適用される取引があります。
具体的に確認していきましょう。
工事の請け負いなどに関する消費税の経過措置
増税前に契約した取引のうち、サービス提供等の完了が増税後(2019年10月1日以降)となるものであっても、消費税率8%が適用される取引があります。
そのうちの代表例が工事の請負等に係る契約です。
工事は1日や2日で終わるものでなく、長期間かかります。
従って、例えば消費税率8%の時代に契約したものであっても、完成が1年後となり、完成が2019年10月1日以降になることもあるでしょう。
そのような場合、早期に契約した取引について消費税率10%を適用するというのは酷な話です。
従って、早期に契約を締結した長期間にわたる工事の請負等について、消費税率8%を適用する経過措置が設けられています。
国税庁の「消費税率の経過措置Q&A(基本的な考え方編)」を基に確認を行います。
なお、全文の引用は行わず、簡単にまとめていますので詳細は原文をご確認ください。
2019年3月31日までに契約した工事の請負等
参考:消費税率の経過措置Q&A(基本的な考え方編) 問14
2019年3月31日までに契約を締結した工事の請け負いにかかる契約、製造の請け負いにかかる契約などに基づき、2019年10月1日以降(増税後)に工事の目的物の完成・引き渡し等を行う場合、消費税率は8%が適用されます。
なお、上記消費税率8%の適用を受けた場合、その相手方(お客さん)に対し、この工事契約が消費税率8%(経過措置)の対象であることを、書面で知らせなければなりません。
工事の請け負い等に係る契約の範囲
参考:消費税率の経過措置Q&A(基本的な考え方編) 問15、19
次に、2019年3月31日までに契約した場合に、消費税の経過措置(8%)が適用される工事の請け負い等の範囲について確認していきます。
消費税率8%(経過措置)が適用される工事の請け負い等の対象となる契約は、2019年3月31日までに締結した以下に掲げる契約です。
1. 工事の請負に係る契約
総務省が公表する日本標準産業分類の、大分類の建設業にかかる工事について、その工事の完成を約束し、且つ、それに対する代金を支払う契約を言います。
2.製造の請負に係る契約
総務省が公表する日本標準産業分類の、大分類の製造業に係る製造について、その製造に係る目的物の完成を約束し、且つ、それに対する代金を支払う契約を言います。
3.その他、これらに類する契約
測量や工事の施工に関する調査、その他の契約(※)で、仕事の完成に長期間必要であり、且つ、その仕事の目的物の引渡しが一括して行われるもののうち、その契約に係る仕事内容について相手方の注文が付されているものを言います。
なお、消費税率8%(経過措置)の対象となるのは、上記の契約のうち、仕事の目的物の引渡しが一括して行われる場合など、一定の要件を満たすものに限られます。
従って、実際の消費税率の判定にあたっては、個々の契約書の内容に沿って消費税率8%・10%の判断を行わなければなりません。
(※)その他の契約
測量、工事の施工に関する調査、地質調査、映画の制作、企画・立案および監理ならびに設計、ソフトウェアの開発、保管、運送、修繕、広告、印刷、技術援助、仲介、検査、情報の提供にかかる契約、検定等の事務処理の委託、市場調査その他の調査に係る契約などが考えられます。
以上、消費税率8%が適用される経過措置についてご紹介しましたがいかがでしょうか。工事の請負等に関して消費税の経過措置(8%)が適用される取引は、2019年3月31日までに締結した契約が条件となっています。
つまり、今から契約を行う工事等について、2019年10月1日以降に完成・引き渡しが行われる工事については消費税率10%が適用されることに留意が必要です。
消費税の増税に備えましょう
消費税の増税に伴う備えは大変です。
増税まであと1か月をきっていますが、今月請求する消費税率が何%なのか、判断に困っている方も多いでしょう。
顧問税理士がいる方は早めに相談しましょう。
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我々ブラッシュメーカー会計事務所は、大手企業の申告などを数多く経験してきた税理士が在籍しており、顧問先のお客様に対し、常に最新の情報をお届けしています。
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【著書】
相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (2021年発売予定)
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士業など専門家1,500人以上の団体の理事に就任している。業界最大手のデロイトトーマツ税理士法人の出身であり、売上高数千億円規模の外資系企業の申告や、個人資産百億円規模の方の税務相談経験も多数あり、創業から上場まで対応が可能である。また、Twitterでは1万人のフォロワーを有しており、経営者や士業が年間数百名参加する交流会を開催する等、強い影響力を持っている。
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