
飲食店の給与計算は、採用時に決めた条件と実際の勤務記録をつなぎ、総支給額、控除額、振込額を確定する仕事です。そこに源泉徴収、保険、年末調整、届出が続きます。まず一人ごとの条件を整え、毎月の締め作業と年に数回の作業を分けると、営業と両立しやすくなります。
対象は、初めてスタッフを雇う店主や、シフトが増えて給与の管理を見直したい飲食店の方です。個人事業か法人か、学生か、勤務時間はどれくらいかによって必要な手続きが変わります。時給だけを入力する前に、誰を、どんな条件で雇っているかを確認するところから始めましょう。
ここでは採用から年末までの全体を扱います。深夜・残業の複雑な重なり、個別の社会保険加入判定、年末調整の各申告書の記入は、該当する状況に応じて詳しく確認する内容です。制度は2026年10月13日に確認した資料をもとに、適用する時期を分けて説明します。
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給与計算を五つの作業に分ける
営業後、レジを締めたら翌日の仕込みが待っている。そんな中で給与の締切も近づくと、勤務時間と振込額の確認だけで手いっぱいになりがちです。給与の材料を普段から五つに分けておけば、月末に探すものが少なくなります。
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| 作業 | お店で集めるもの | ここで決まること |
|---|---|---|
| 人と条件を登録する | 入社日、労働条件、時給、支払日、税務・保険の情報 | 計算に使う条件と届出の対象 |
| 勤怠を締める | 出退勤、休憩、休日、勤務変更の記録 | 実際に働いた時間 |
| 支給額を計算する | 勤怠と賃金の条件、手当の内訳 | 基本給、割増賃金、総支給額 |
| 控除と支払を確定する | 税額表、保険の通知、住民税の通知など | 控除額、手取り、振込額 |
| 納付と記録をつなぐ | 給与明細、賃金台帳、振込結果、納付記録 | 帳簿への反映と次の期限 |
作業の順番は、条件、時間、支給、控除、支払です。勤怠が未確定のまま振込額だけを決めると、後から支給額を直した際に控除や帳簿まで修正が広がります。営業の担当者が勤怠を確認し、給与の担当者がその確定版で計算する流れが合います。
一人のお店で店主がすべて担当する場合も、確認する順番は同じです。シフト表を見た日と給与を振り込む日が離れていても、どの記録を使ったか分かる形にしておくと、翌月に質問されたときも落ち着いて確認できます。
採用時に「毎月変わらない情報」を整える
初日の説明では、接客や盛り付けの手順に気持ちが向きます。その前後に、給与計算の土台となる情報を一緒に集めておくと、最初の支払がスムーズです。氏名だけのスタッフ一覧から、計算条件まで確認できる一覧へ広げます。
労働条件では、契約期間、仕事内容、働く場所、時間、休憩・休日、賃金の決め方、締日・支払日などを明示します。賃金や労働時間などの重要事項は書面での交付が基本で、本人が希望する場合の電子的な明示にも条件があります。口頭で決めた時給を後から思い出す運用より、本人と店が同じ内容を持つ方が確実です。
給与計算用の一覧には、入社日、時給や月給、適用開始日、手当、給与の締日と支払日を置きます。昇給したときは新しい金額だけを上書きするより、「いつの勤務分から変えたか」も残すと、前後の期間を計算できます。締め期間の途中に変更がある場合は、その期間を分けて確認します。
税務では扶養控除等申告書の提出状況、保険では加入状況と届出に必要な情報を確認します。学生や掛け持ちのスタッフには、主な勤務先、契約する時間、契約更新の見込みを聞く項目も用意します。税金と保険では判定に使う条件が違うため、「学生だから全部不要」という一つの区分では処理しきれません。
振込先などの個人情報は、閲覧できる人を絞って管理します。シフトの共有表には勤務に必要な情報を置き、税務や保険の資料は別に保管する方法もあります。スタッフ全員が見られる画面と、給与担当者だけが確認する画面を分けると、現場で必要な情報を取り出しやすくなります。
シフト表から実際の勤務時間へつなぐ
予定のシフトが17時から23時でも、予約が増えて閉店作業が延びることがあります。仕込みの開始が早まった日や、休憩中に注文対応をした日もあるでしょう。給与計算では予定の時間に加え、実際の勤務を確認できる記録が必要です。
店舗で確認したいのは、出勤、退勤、休憩開始、休憩終了と、予定から変わった理由です。記録の方法は紙でも勤怠システムでも、お店で続けられる形が合います。月末だけでまとめて確認するより、変更があった日に一言残せる方が、店主とスタッフの記憶に頼らずに済みます。
開店前の準備や閉店後の片付けも、店の指示で行う仕事として労働時間に当たる場合があります。レジを閉めた時刻をそのまま退勤時刻にするより、仕事が終わった時刻を確認する方が実態に合います。休憩も、名目上の休憩時間と、仕事から離れて自由に使える時間を区別します。
月の締めでは、勤務記録の抜け、長い休憩、退勤の未入力、予定にない出勤を先に確認します。間違いか、実際の変更かを分けてから確定します。本人に確認した日と修正内容が残ると、同じ記録を別の担当者が再び直すことも減らせます。
カフェの朝番と居酒屋の夜番では、確認する時間帯が違います。昼営業中心のお店でも、イベント準備や貸切営業で遅い時間になる月があるため、普段と違う勤務だけ取り出せると便利です。給与の締日が近いからと予定のシフトで埋めるより、差がある日を短く確認する時間を作ります。
基本給と割増賃金を分けて計算する
時給制の基本となる考え方は、時給と労働時間を掛けることです。そこに、法定時間外、法定休日、深夜などに該当する割増を確認します。同じ「いつもより長く働いた日」でも、契約上の所定時間を超えた部分と、法定時間外になる部分は一致しないことがあります。
法定労働時間は原則として1日8時間・週40時間です。一部の業種で常時10人未満の事業場に適用される週44時間の特例などもあるため、お店に適用する制度を確認してから計算の設定を決めます。変形労働時間制などを用いる場合も、その制度に沿った確認が必要です。
深夜は22時から翌5時までで、原則として25%以上の割増が必要です。法定時間外や法定休日の割増と重なる勤務では、重なり方を分けて扱います。日付が変わったことだけで法定休日の扱いが決まるわけではないので、休日の定めと勤務記録を合わせて確認します。
仮定の試算例:22歳のスタッフが、通常の平日に17時から23時まで働き、20時から20時30分まで仕事から離れて休憩したとします。時給は1,500円、ほかの手当はなく、この日・週には法定時間外労働や法定休日労働が生じない前提です。深夜割増は25%で計算します。以下は税金や保険を引く前の賃金であり、実際の手取りではありません。
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| 計算する部分 | 前提・計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 6時間から休憩0.5時間を引く | 5.5時間 |
| 基本となる賃金 | 1,500円 × 5.5時間 | 8,250円 |
| 深夜の上乗せ | 1,500円 × 25% × 1時間 | 375円 |
| この勤務の総支給額 | 8,250円 + 375円 | 8,625円 |
別の計算でも、深夜以外の4.5時間は6,750円、深夜の1時間は1,875円となり、合計は8,625円です。深夜の時間を基本給から外してしまったり、基本給に含めた後で深夜分をもう一度全額足したりすると、計算がずれます。上乗せ部分を分けて見ると確認しやすくなります。
同じ条件の勤務が一つの給与期間に10回だけあるなら、その期間の総支給額は86,250円です。これは計算の仕組みを見るための例で、税額や保険の加入を決める基準額ではありません。実際は契約時間、ほかの勤務、各種手当、適用される最低賃金なども確認して計算します。
総支給額・手取り・お店の負担を分ける
給与明細の総支給額と、スタッフの口座へ振り込む額は異なることがあります。源泉徴収する税金や本人負担の保険料、住民税の特別徴収などがあるためです。まず支給と控除の内訳を別々に確定し、その差額を支払います。
基本の関係は「手取り額=総支給額-控除額」です。先ほどの一勤務8,625円の例でも、控除の条件を確定していなければ、そのまま振込額とは言えません。毎月の明細では、何時間に対する賃金か、何を引いたかが分かる形にします。
控除には根拠の確認も必要です。法律による税金・保険料の控除と、食費や物品代など店独自の扱いを一つにまとめず、後者は賃金から控除できる条件を確認します。「まかないを食べたから」と振込額だけを減らす運用では、賃金の説明と経理の記録が合わなくなります。
お店の人件費は、スタッフへの振込額だけでは見えません。給与の総額に加え、事業主が負担する保険料なども確認します。本人から預かった金額は後で納付するお金なので、運転資金として余ったように見えても、自由に使える利益とは分けて管理します。
採用人数を増やすときは、「月にいくら振り込むか」と「店が月にいくら負担するか」を並べてみます。保険料は加入制度、給与、年齢などによって変わるため、一律の割合だけで確定するより、現在の通知や料率で計算した金額を使う方が出店計画に役立ちます。
源泉徴収は支払う年と本人の申告書で確認する
スタッフへ給与を支払う飲食店は、個人経営でも法人でも、源泉徴収の確認が必要です。源泉徴収は、給与の支払時に税金を差し引いて国へ納める仕組みです。給与計算の表には、総支給額と別に源泉徴収税額を置きます。
計算に使う税額表は、給与を支払う年のものを選びます。月額表や日額表など、支払方法に応じた表も確認します。扶養控除等申告書を提出している主な勤務先の給与と、ほかの勤務先の給与では、甲欄・乙欄の扱いが異なります。単にアルバイトか正社員かで欄を分ける仕組みではありません。
掛け持ちをしているスタッフについては、申告書をどの勤務先へ提出しているかを確認します。本人の希望だけで源泉徴収を省略するより、その年の税額表と申告書に沿って計算する方が、年末に給与の記録を説明しやすくなります。年末調整の対象も同じとは限らないので、主な勤務先の情報は採用時から残します。
2026年分は、基礎控除・給与所得控除などに改正があります。国税庁の案内では、原則2026年12月1日から施行され、その年分の所得税から適用されます。一方、2026年11月までの給与の源泉徴収事務は変更されず、年末調整で改正後の計算につなぎます。途中の月から独自に新しい控除額を当てはめる扱いとは分けて考えます。
2027年の給与を支払うときは、2027年分の税額表で改めて確認します。給与ソフトも、月々の源泉徴収と2026年分の年末調整の双方が該当する資料に対応しているかを見ます。過去の「年収の壁」の数字を、一人ひとりの税金や保険に共通する基準として使うより、制度ごとに条件を確認する方が整理しやすくなります。
納付は「預かった月」と「納める日」をつなぐ
源泉徴収した税金は、原則として給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納めます。勤怠の対象月と給与を支払う月が異なるお店では、支払月から納付期限を確認します。勤務した月だけを見てカレンダーへ入れると、一か月ずれることがあります。
給与の支給人員が常時10人未満などの条件を満たし、申請による納期の特例を受けている場合は、対象の源泉徴収税を半年分まとめて納付できます。1月から6月分は7月10日、7月から12月分は翌年1月20日が期限です。スタッフが少ないお店でも、申請前から自動で半年払いになる仕組みではありません。
毎月の給与表に、預かった税金、支払日、納付予定日、納付済みの確認をつなげます。特例を利用する場合は半年分を月ごとに積み上げると、納付時に金額を集計し直す負担が少なくなります。給与以外の源泉徴収対象の支払がある場合は、特例の対象範囲も区別します。
住民税の特別徴収は、自治体からの通知などに沿って別に管理します。源泉徴収税の納期の特例と、住民税側の納期の特例は別の制度です。新宿区の住民税の特例では対象期間と期限も異なるため、給与表に「税金」とだけ書くより、納付先ごとの欄を作る方が分かりやすくなります。
締め作業では計算した金額だけでなく、実際の振込と納付の記録までそろえます。支払予定の一覧と銀行の結果に差があるときは、口座の誤り、返金、支払日変更などを確認します。支払の確認が終わってはじめて、その月の給与を次の月へ引き継げます。
これから新宿で飲食店を開く方は、税務の準備と一緒に開業資金の計画も整えておきましょう。融資支援の内容や担当者は、下のページでご覧いただけます。
社会保険はお店の形と本人の働き方を分ける
健康保険・厚生年金の確認には、「事業所が適用対象か」と「そのスタッフが加入対象か」の二つの段階があります。どちらか一つの条件だけで決めるより、お店の形を確認してから本人の勤務条件へ進みます。
2026年10月現在、常時従業員を使用する法人の事業所は、業種を問わず原則として強制適用です。事業主のみの場合も含まれます。個人の事業所は常時5人以上でも業種による違いがあり、飲食店は現在の強制適用から除かれる業種に含まれます。個人の飲食店について「5人になったら一律に加入」とする説明では、業種の条件が抜けます。
強制適用に当たらない場合にも、一定の条件で任意適用を受ける制度があります。すでに加入しているお店は、その適用状況を先に確認します。法人化した月に適用が変わる場合は、給与計算の設定だけでなく、事業所と対象者の手続きを合わせて考えます。
加入対象のスタッフは、まず通常の労働者の所定労働時間・日数との比較を確認します。週の所定労働時間と月の所定労働日数がいずれも4分の3以上となる基準と、これに満たない短時間労働者の基準は別です。学生という情報も、それぞれの基準で扱いを確認します。
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| 確認する段階 | 店で用意する情報 | 考え方 |
|---|---|---|
| 事業所の適用 | 個人・法人、業種、人数、現在の適用通知 | 事業所の対象を先に確かめる |
| 通常の加入基準 | 通常の労働者と本人の所定時間・日数 | 4分の3基準などを確認する |
| 短時間労働者の基準 | 企業規模、週の所定時間、雇用見込み、学生の区分 | その時点の要件で別に確認する |
| 給与への反映 | 資格取得日、保険料の通知、控除の扱い | 届出と計算を同じ情報につなぐ |
短時間労働者の月額8.8万円以上という賃金要件は、2026年10月に撤廃されました。ただし、これによりすべての小規模店のアルバイトが一斉に対象になるわけではありません。現時点では原則51人以上の企業等に関する規模要件があり、週20時間以上、2か月を超える雇用の見込み、学生でないことなどを確認します。この人数は店のシフト人数そのものではなく、短時間労働者を除く厚生年金の被保険者数等で確認し、法人では同じ法人番号の適用事業所を合算します。任意特定適用事業所などの扱いも別にあります。
企業規模の基準は2027年10月から36人以上へ広がる予定です。また、個人事業所の業種による対象の違いは2029年10月から見直されますが、その時点で存在する対象外の個人事業所には当分の間の除外措置があります。現在の加入判定と将来の準備を分け、契約する時間や法人化の予定が変わったときに確認し直すことが大切です。
労災・雇用保険は健康保険・厚生年金と別に確認する
個人経営の飲食店が健康保険・厚生年金の強制適用に当たらない場合も、労働保険の確認は別に必要です。労働保険は労災保険と雇用保険を合わせた呼び方で、加入の考え方や届出先が社会保険とは異なります。
労災保険は、原則として労働者を一人でも雇う事業に適用されます。短い時間のアルバイトも、人数が少ないことだけで対象外になるものではありません。店主や家族、法人の役員などは、従業員と同じ扱いでよいかを別に確認します。
雇用保険では、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあるかなどを確認します。学生などの適用除外と例外もあります。社会保険と同じ「20時間」が出てきても、雇用の見込み期間や学生の扱いを同じ条件としてまとめず、制度ごとに判断します。
採用時には加入判断、年度ごとの作業には労働保険の年度更新を置きます。年度更新は前年度の保険料を精算し、当年度の概算保険料を確認する作業です。2026年度の申告・納付期間は6月1日から7月10日までで、賃金の年間集計につながります。
実際の手続きや労務の判断は、管轄の労働基準監督署、ハローワーク、社会保険労務士などに確認する内容です。税務・経理と関係が深い資料は共通していても、依頼する業務の範囲は区別します。給与の資料を整えておくことは、税務と労務のどちらへ確認する場合にも役立ちます。
年末調整は年間の給与と本人の情報をそろえる
年末調整は、毎月の給与から源泉徴収した税額と、その人の一年分の税額との差を精算する手続きです。通常はその年最後の給与を支払う時に行います。給与を支払っている全員を同じように処理するのではなく、扶養控除等申告書の提出や勤務状況などから対象を確認します。
年の途中で入ったスタッフが前の主な勤務先でも給与を受け取っていた場合は、前職の源泉徴収票などの確認が必要になることがあります。口頭で聞いた金額だけで合計するより、資料で確かめられる状態を作ります。必要な前職分を確認できないときは、店で年末調整できるかを確認します。
年間の給与は、単に年内の銀行振込額を合計するものとは限りません。年末調整の対象は、原則としてその年に支払うことが確定した給与です。支払が遅れた給与や、前年に支払が確定していて今年支払った給与がある場合は、どの年分に含めるかを分けます。支払日と給与の帰属年を区別できる記録が役立ちます。
2026年分は、国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」で改正内容と対象者を確認します。この手引は公表済みです。前年の様式や控除の条件をそのまま使うより、本人から集める申告書とソフトの設定を当年分にそろえると、後から書類を集め直すことが減ります。
お店の準備としては、早めに対象者を整理し、必要な申告書、証明書、前職の源泉徴収票などを一覧にします。締切は店内の回収予定日と法定の期限を分けて伝えます。まだ届いていない資料は名前と内容を残し、届いたものから確認できるようにします。
給与と届出の年間カレンダー
毎月の計算に年末調整や保険の定例作業が加わると、繁忙期と重なる月が見えてきます。次のカレンダーは、給与を支払う飲食店向けに、店で準備する資料と提出・納付の時期を組み合わせたものです。すべての項目がすべてのお店に当てはまるわけではなく、対象と適用状況を確認して使います。
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| 時期 | お店で行う作業 | 対象・期限の考え方 |
|---|---|---|
| 毎月の締日後 | 勤怠確定、支給・控除、給与明細、振込結果の照合 | 店の締日・支払日と、本人の条件を確認 |
| 原則、給与支払月の翌月10日 | 源泉徴収税の納付 | 納期の特例適用中の対象分は別の期限 |
| 1月 | 前年分の年間給与と年末調整結果を整理 | 納期の特例は前年7〜12月分を1月20日まで |
| 前年分の提出時期 | 給与支払報告書や該当する法定調書を準備 | 2026年分の手引では2027年2月1日が提出期限 |
| 4〜6月の給与を集計 | 社会保険の算定基礎届に向けた資料整理 | 定時決定の対象者・例外を確認 |
| 6〜7月 | 労働保険の年度更新 | 2026年度は6月1日〜7月10日 |
| 7月 | 算定基礎届、源泉徴収税の半年分納付 | 算定基礎届は原則7月10日、納期の特例1〜6月分も7月10日 |
| 年末前〜最後の給与支払時 | 対象者確認、申告書回収、年末調整 | その年の手引・様式と最後の給与支払日で準備 |
| 採用・退職・条件変更の都度 | 情報更新、必要な資格取得・喪失や異動の確認 | 定例月を待たず、事実が生じた時点から期限を確認 |
源泉徴収税などの期限が土曜日や休日に当たる場合の扱いもあります。日付だけを翌年へコピーするより、その年の案内で確認します。2026年分の法定調書の手引では、翌年の提出期限は2027年2月1日とされています。
また、2027年1月1日以降は、市区町村へ給与支払報告書を提出した場合に、税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなす制度が適用されます。2026年分以降の税務署提出用の源泉徴収票は、従来どおりに別途作成・提出する方法から変わります。従業員に交付する源泉徴収票や、ほかの法定調書まで不要になるという意味ではありません。当年の手引で対象と方法を確認します。
社会保険の算定基礎届は、一般に7月1日現在の対象者について4〜6月の報酬をもとに行います。新規取得や退職、随時改定などで扱いが異なる人もいるため、給与の合計を全員一律に転記するより、対象者の一覧を先に確認します。
給与の記録を帳簿へつなげる
給与の振込額だけを経費にすると、総支給額や預かった税金・保険料が見えにくくなります。給与表の支給と控除の内訳を使い、スタッフに対する賃金、預り金、事業主負担の保険料などを分けて帳簿へつなぎます。
たとえば総支給額から源泉徴収税を引いて振り込んだ場合、引いた税金は店の給与経費が減ったことを意味しません。スタッフから預かり、国へ納める金額です。給与の振込日と税金の納付日が別でも、給与表をたどれば同じ支払に関係することが分かるようにします。
給与明細、賃金台帳、銀行の振込結果、納付結果は、それぞれ役割が違います。明細だけで振込済みを確認できるわけではなく、銀行の振込だけでは計算の内訳が分かりません。月ごとのフォルダに確定版をまとめ、修正がある場合は理由と変更後の記録を残します。
給与計算を外へ依頼する場合も、店が確認する勤怠と、計算する担当者へ渡す資料がつながっていることが大切です。営業中に発生した変更を店が分かる形で残せば、計算する側も確認する日を絞れます。経理との接続を見直す際は、飲食店の経理・記帳も合わせて整えると月の数字を追いやすくなります。
一人で抱え込みにくい締め作業を作る
給与の担当者が休んだ日に、時給の変更や締日の扱いが分からない。こうした状況を減らすには、複雑な仕組みを増やすより、三つのファイルと確認の順番を決める方法が合います。「人と条件の一覧」「勤務記録」「給与の確定版」を分け、各月でつなぎます。
店内の作業予定は、勤怠の確認日、計算結果を確認する日、振込の準備日を分けます。たとえば支払日の数日前に店主が計算結果を確認する予定を置けば、未入力の勤務や時給の違いが見つかっても、支払までに確認する時間を取れます。これはお店の作業予定で、届出の法定期限とは別です。
確認する順番は、人数、勤務時間、支給額、控除、振込先です。先月から総支給額が大きく変わった人がいれば、シフトが増えたのか、昇給したのか、前月の修正なのかを確かめます。差がある理由が分かれば、毎回すべての計算を最初から追う負担も減ります。
退職するスタッフについても、最終勤務日、最後の支払、未精算の手当、保険や住民税の情報をまとめます。退職日に給与の記録を消すより、後の支払や書類の交付まで追える形が合います。連絡先が変わる予定があれば、本人が必要な書類を受け取れるよう確認します。
スタッフが増える前にこの流れを整えておくと、店主は忙しい日の勤怠確認に集中し、計算や税務へ渡す情報も揃えやすくなります。給与ソフトの導入を考えている場合も、時給、締日、勤務記録のルールが分かれば、お店に必要な設定を選びやすくなります。
お店に合う給与・税務の分担を考えたい方へ
給与計算の悩みは、計算の方法、毎月の資料集め、源泉徴収と年末調整、保険の加入判断などに分かれます。まず「どの段階で止まるか」を伝えると、必要な資料や確認先を整理しやすくなります。税務と労務の受託範囲も、依頼内容に応じて確認することが大切です。
税務顧問や経理支援の依頼を検討している方は、スタッフの人数、個人・法人の別、給与の締日と支払日、いま使っている勤怠記録や給与表をお知らせください。年末調整が近い、給与の預り金と帳簿が合わない、採用前に事業主負担も把握したいなど、お店の状況からお悩みをお聞かせください。
飲食店の税務顧問の案内では、毎月の経理や申告を含めて、依頼する範囲を考えられます。給与だけを切り離さず、売上、仕入れ、人件費と納付予定を同じ月の数字で見られると、採用や営業の判断にもつながります。
新宿で開業・出店を予定し、採用費や給与を含めた開業資金を整理したい方は、開業融資の支援案内からその状況をお伝えいただけます。給与・税務の依頼と、開業資金の支援を分けて、お悩みをお聞かせください。
税務監修:税理士 坂根崇真
