【相続トラブル】遺言書は破られる可能性がある、書き方を誤ると無効
今回は、遺言書に関する相続トラブルについてご紹介します。
相続が起きた際、トラブルが起こるのはよくある話です。
なかでも、相続税の問題は、東京では約6人に1人発生しています。
「なんだ、6人に1人か」と考え、相続の備えを先延ばしにしてはいけません。
相続税が6人に1人発生する問題だとしても、相続は6人中6人全員に共通して発生する問題であり、事前の備えが欠かせません。
また、「うちは財産が少ないから大丈夫」と思っている家庭ほど揉めています。
財産が多い家庭では、ある程度みんなが納得して遺産配分を行うことができます。
一方で、財産が少ない場合、人間には欲があるため少ない財産を取り合うことにつながります。
今回は、揉めないための遺言についてお話しや、遺言書が無効となった場合の相続トラブルについてご紹介します。
家族の仲が今現在は良くても、10年20年先の話は誰にもわかりません。早めに備えましょう。
目次
争いを避けるためには遺言書の作成が有効
人が亡くなった場合、亡くなった方の財産は相続人で分け合うことになりますが、財産をどのように分けるかは、亡くなった方の遺志である「遺言書」の内容が優先されます。
人が生きているうちは、自分の財産をどう使おうと勝手です。
散財をしても、コツコツ節約を行っても構いません。
これは、亡くなったあとの財産についても基本的に同じことが言えます。
人は、遺言によって死後の財産を自由に処分することができるという考え方があるからです。
つまり、「故人の財産は相続人の物でなく、故人の物である」という考えです。
ただし、遺言書が無い場合は相続人で話し合い(遺産分割協議と呼びます)、財産をどのようにわけるか皆で決める必要があります。
遺言書が無い場合は家族仲が壊れ、財産の取り合いで泥沼の争いになることもあります。
従って、元気なうちに遺言書を作成されることをお勧めします。
遺言書には作成ルールがある
遺言書の作成にあたっては様々なルールが定められています。証人の立ち合いや書き方など、法律できちんとルールが決まっており、これに従わなければ無効となってしまいます。
なお、一言で遺言書といってもいくつか種類があり、代表的なものは以下の2つです。
- 自筆証書遺言
ご自身で遺言書を自筆し、保管を行う方法 - 公正証書遺言
遺言書を法律の専門家に作成してもらい、原本は公証役場に保管してもらう方法
皆さんの認識では、遺言書といえば上記「1」、自筆の遺言書ではないでしょうか。
確かに、自筆の遺言書は、誰でも気軽に取り組むことができます。
一方、法律の要件が実は厳しく、作成した遺言書が無効となるケースも多い、ということはあまり知られていません。
このうち、自筆証書遺言については要件が非常に厳しく設定されています。
遺言書は、作成しても法律のルールに則っていなければ無効になってしまいます。
民法第968条1項に要件が定められていますので、確認を行っていきましょう。
(民法第968条1項)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
これだけ見ると簡単に見えますよね。
しかしこれ、とても要件が厳しいです。
たとえば遺言書に日付が無かったり、9月26日、9月吉日などと書いてある場合は要件を満たしません。2019年9月26日など正確に年月日を記載しなければならず、また、自筆した内容について訂正を行うときのルールも厳しく設定されています。
加えて、エンディングノートやビデオレターについても、遺産をどうわけるか伝えることはできますが、上記の要件を満たしていないため法的には無効です。
エンディングノートや遺言書を作成しても、法的に無効であれば相続人の話し合い(遺産分割協議)で財産をわける必要が生じるため注意が必要です。
遺言書が無い場合の失敗例:兄弟間の話し合い(遺産分割協議)で泥沼に
兄は「財産の8割は兄のモノと遺言書に書いてあるから、遺言書通りでいいよね?お母さんの介護は俺がしたし」と弟に尋ねます。
すると、弟はこう言いました。「いや、8割は取りすぎだよ。相続する権利はお互い平等にあるんだから、5:5でわけよう」。
争いが起きてしまいました。兄は介護をした分、せめて財産の6割が欲しいと主張します。
しかし、相続する権利は弟の言い分通り、原則としてお互いに半分ずつあります。
兄は、母の遺言書を軸に、せめて6割と主張する一方、弟は財産を半分もらえると言う権利を主張し、お互い譲りません。
今は兄弟の縁よりお金が大事であり、もらえるものはもらいたい、と考える方も少なくありません。
兄弟間の仲が良くても、10年後・20年後、また、介護が必要になればお互いの負担感は変わっていく点に注意が必要です。
自筆証書遺言の失敗例:今は家族の仲が良くても10年先はわからない

父は5年前に他界し、母が70歳、兄弟2人の家庭です。それぞれ家庭を持っており、母とは別居しています。
兄弟2人はそこまで仲が仲が悪いわけではありませんが、特段仲が良いわけでもありませんでした。
したがって、母は、2人が喧嘩しないように遺言書を手書きで作成しました。
「兄に8割、弟に2割。長男だし、介護も任せるから兄に多めに遺産を渡そう。」
そう考え、遺言書を作成しました。結果、10年後に母の介護が必要になり、兄は介護を行い、15年後に母は他界しました。
しかし、ここで問題が発生しました。母は確かに遺言書を作成していました。
ただし、遺言書には財産の分け方が書かれているものの、法律のルールに基づいておらず、母が作成した遺言書は無効となってしまいました。
これでは、不動産の名義変更など相続の手続きを行うことができません。
したがって、兄弟間で財産の分け方について話し合い(遺産分割協議)を行う必要が出てきました。
このように、自筆遺言証書については無効となるリスクが存在しています。
自筆証書遺言の失敗例:遺言書を破り捨てられる可能性がある
亡くなった方と仲が良くない相続人がおり、もしその方が遺言書の第一発見者となった場合、どのような行動をとることが予測されるでしょうか。
「自分には財産がもらえないような遺言が書かれているのではないだろうか、それなら、遺言書を捨ててしまえば兄弟間で遺産をどうわけるかの話し合いに持ち込める。」そう考える方もいるでしょう。
もちろん、破り捨てたことが判明した場合は罰則が与えられます。具体的には、相続する権利を失うこととなります。
ただし、その方にお子さんがいればお子さんに相続する権利が移ることとなり、また、そもそも破り捨てたということを証明することが現実的には難しいでしょう。
つまり、遺言書を破棄されたとしても誰も気が付かない可能性が高いと考えられます。
円満な相続を迎えるためには、遺言書の紛失リスクを排除する必要があります。
自筆証書遺言の失敗例:相続税の支払いを考慮していない
亡くなった時の財産である「遺産」は、遺言書によって相続人以外に遺すこともできます。
ただし、遺産の分け方によっては、相続税が支払えないケース、相続税が通常の2割増しでかかるケースがあるため注意が必要です。
相続税を支払えるか
相続税は遺産を受け取った方にかかる税金ですが、相続税は原則として現金で納めなければなりません。
したがって、例えば5,000万円のマンションを遺言書によって受け取った場合でも、相続税は現金で支払わなければなりません。
このように、換金できない財産を受け取った場合、相続税の支払いに困る可能性があります。
配偶者(奥さん、旦那さん)と子ども以外に財産を遺す場合、相続税の支払いが増えるかも
相続税は財産を受け取った方にかかる税金ですが、財産を受け取った方の属性に応じて支払うべき相続税が変わります。
遺産をわける相手によっては、通常の2割増しの相続税がかかるケースがあります。
具体的な例をあげると、亡くなった方の孫やご兄弟、或いは甥、姪に遺産をわけることになった場合、それらの方にたいしてかかる相続税が通常の2割増しの金額となります。
相続が起こった際の遺産配分は税金の負担だけを考えるべきではありませんが、相続税の負担も考えた遺産の分け方を検討してみると良いでしょう。
※亡くなった方のご両親が先に他界されており、また、子どもがまだ元気な一般的なケースを前提としています。
話し合いがまとまらない場合
兄弟間で話し合い(遺産分割協議)がまとまらない場合であっても、相続税の申告と相続税の支払いは、亡くなってから10か月以内に行わなければなりません。
まだ遺産をどうわけるかも決まっていないのに、税金を支払わなければいけません。
しかし、税金など大した問題ではありません。兄弟間で争うことにより、弁護士への報酬がかさむことはもちろん、時間を浪費し、精神的にも疲れていきます。
一度争いが起きると、数年前、数十年前のことまで遡って言い争いを行うことも少なくありません。こうなってしまっては、亡くなった方の「喧嘩しないように」という気持ちが台無しになってしまいます。
遺言書の内容はオープンに
遺言書を作成する際は、「書いた内容をオープンに」した方が揉めにくいと言われています。
なぜなら、遺言書をこっそり作成し、隠しておいた場合、実際に相続が起こった際に亡くなった方の気持ちが伝わらず、トラブルの原因になるからです。
遺言書を作成する際は、家族全員にどのような遺言の内容で作成するかを伝え、かつ、直接思いを言葉で伝えることが望ましいでしょう。
遺言書は、財産をどうわけるかに意識がいきがちですが、より大切なのは家族を思う「気持ち」だからです。
法律のルールに則った遺言書が無いから争いが起きる
ネットの普及により、ある程度の情報であれば簡単に手に入る時代になりました。
みんな、相続が起きれば自分たちに財産を受け取れる権利があることを理解しています。
長男だから、家の跡継ぎだからといって多く財産をもらう権利があるわけではありません。
法律上は、兄弟には同じだけの権利があります。
それ故、法律のルールに則った遺言書が無い場合、相続人は迷い、権利を主張し、争いが起きます。
したがって、遺言書の作成を行う際は専門家のサポートを入れることをお勧めします。
公正証書遺言をお勧めします
ご自身で作成する自筆証書遺言は、法律に則って作成を行わなければ無効となり、また、家族仲が良くない場合は上記で説明したような紛失リスク等も存在します。
2020年7月10日から、法務局で自筆証書遺言を預かってくれる制度が始まります。ただし、やはり法律の要件を満たさなければ無効となることを考えれば、法律の専門家が作成し、かつ、公証人役場が保管してくれる公正証書遺言が望ましいでしょう。
遺言書の作成は元気なうちにしか行うことができません。
坂根崇真税理士事務所では、相続税の対策はもちろん、遺言書の作成サポート業務もご提供しています。
揉める可能性がある場合は、提携の弁護士と共同で問題解決にあたります。
うちの家庭は相続税がかかりそうか、遺言書を書くにはどうしたら良いか。そんなご相談でも構いません。
まずはお気軽に、こちらのお問い合わせページからお問い合わせください。
相続税は、お亡くなりになった方の遺産を受け取った方にかかる税金ですが、税金面に加えて遺族の心情などを踏まえる必要がある難しい性質を持っています。
遺産分割を行う際は税理士のサポートを入れることをお勧めします。
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【プロフィール】
一般社団法人 全国第三者承継推進協会 理事
株式会社坂根ホールディングス 代表取締役
坂根崇真税理士事務所 税理士
【著書】
相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (2020年発売予定)
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税理士による相続メディア:あんしん相続税 などを運営(合計アクセス数:月間4万人)
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【概要】
業界最大手のデロイトトーマツ税理士法人の出身であり、個人資産百億円規模の方の税務相談経験や、数多くの相続税申告経験を有している。また、相続税に関するメディアで150以上の記事を執筆しており、相続に関する書籍も執筆している。
士業など、専門家の協会員1,500人以上の団体 全国第三者承継推進協会の理事に就任しており、後継者不在による廃業を防ぐための対策・支援活動も併せて行っている。

