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家族信託とは?活用方法など相続税に強い税理士が徹底解説!

2020年11月30日

家族信託とはどのような制度?次の観点から解説していきます。

  •  家族信託の費用
  •  銀行で申し込むことができる家族信託とは
  •  家族信託の契約書はどのように作成すればよいか
  •  家族信託において司法書士や行政書士等に相談するメリット
  •  家族信託のメリット・デメリット
  •  家族信託に関する税金
  •  家族信託の活用例(認知承対策、不動産の承継対策)

 

目次

家族信託とはどのような制度?

家族信託とはどのような制度でしょうか、次の3つにポイントを絞ってご紹介します。

  • 家族信託の仕組み
  • 家族信託で信託できる財産
  • 家族信託の手続きの流れ

家族信託の仕組み

まずは家族信託の仕組みについてみていきます。

家族信託とは民事信託と言われる制度です。従来信託契約は信託法によって定められており、信託業法の免許を受けた信託銀行・信託会社しか認められていませんでした。

しかし、2007年の信託法改正によって信託業法の免許を受けていない一般の方でも信託契約を締結することができるようになりました。

信託業法の免許を受けて営利目的で営業を行う信託契約を「商事信託」、営利目的で行わない信託契約は「民事信託」と呼ばれています。

次に信託契約の仕組みをご説明します。

信託契約には以下、3者の関係性で表すことができます。

  • 委託者:財産を託し、管理してもらう人
  • 受託者:委託者から財産を託され管理する人
  • 受益者:信託された財産の権利を持ち、信託財産から得られる利益を受けとる人

信託契約では、委託者が財産を受託者に託すことを契約で約束します。

受託者は託された財産を管理・運営し、受益者に財産から得られた利益を配分する義務があります。

信託された財産は受託者に名義を変更します。受託者に名義を変更することで、受託者は受託者の権限を持って、信託財産を管理・運営・処分することができます。

信託契約では受託者に名義が変わることになりますが、あくまで、財産の実質的な所有者は委託者であるため、贈与税等がかかることはありません。

財産を託された受託者は次の2つの重い責任を持ちます。

  • 忠実義務
  • 善管注意義務

忠実義務とは受託した財産について、忠実に管理し、自己の財産と利益相反とならないように管理する義務です。

利益相反となる行為を行うと忠実義務違反となり、受託者としての立場を解任されたり、場合によっては損害賠償を請求される可能性があります。

たとえば、受託した不動産を市場価格よりも著しく低い価格で販売し、自ら購入する場合などは委託者と受託者で利益相反となるため、忠実義務違反となります。

一方の、善管注意義務とはその立場を全うする立場において通常期待される役割を全うする責任のことです。

信託契約の受託者は信託された財産の管理・運営を行う必要がありますので、業務の遅延等も善管注意義務違反となる可能性があります。財産を信託された受託者には重い責任があるということを覚えておくとよいでしょう。

また、委託者と受益者は必ずしも別人である必要はありません。委託者=受益者で信託契約を行うケースも多くあります。なお、受益者が死亡した場合、受益者を変更することも可能です。

たとえば、委託者兼受益者である収益不動産の持ち主である場合、収益不動産の管理・運営を受託者と信託契約を行うとしましょう。

このような場合に、委託者兼受益者が死亡した場合、その不動産を相続人に相続させ、引き続き受益者として利益を享受することも可能です。

家族信託では従来専門家の役割となっていた受託者の立場を家族が担うことが特徴です。家族が受託者を担うことで、他人に財産管理を任せることなく、財産の管理ができるということになります。

額の大きい財産や管理の手間がかかる不動産は高齢者にとって大きな負担となりますので、身近な専門家もしくは知識の豊富な子供や親戚等がいれば安心して管理を任せることができるでしょう。

家族信託で信託できる財産

信託法2条において信託できるものは「財産」と規定されており、金銭的に評価できる財産であれば、信託することが可能です。

たとえば、次のものがあげられます。

  • 現金
  • 不動産
  • 株式
  • 債権
  • 特許権 等

一方で、ローンや債務等のいわゆる消極財産は信託することができません。

信託できる財産のなかで特に注意が必要と言われているのが「借地権」です。

借地権とは建物の所有を目的とするために土地を借りる権利です。

借地権はあくまで借りている土地であるため、譲渡には地主の承諾が必要とされていますが、信託契約が譲渡にあたるかどうかは専門家でも見解が別れています。

借地人と地主の関係が悪化すると、契約更新や売却の際に地主の承諾を得る事が難しくなる可能性があるため、借地権を信託する際は地主の承諾を得た方が良いでしょう。

もう一つ注意が必要と言われているのが「農地」です。

農地は代々引き継ぐケースも多く、家族信託で承継していきたいと考えている方も多い財産です。しかし、農地には農地法という法律があり、規制がある為、農地法に定められている許可または届け出を行わなければ信託契約を結び、不動産に信託の登記を行うことができません。

農地は農地法の規制があり、一般的な宅地とは異なる扱いをする必要があるということは覚えておいた方が良いでしょう。

 

家族信託の手続きの流れ

家族信託はどのような流れで手続きが行われるのか、解説します。

一般的に多く行われているのは信託契約によって信託を開始する家族信託です。

信託契約を行う場合は、委託者と受託者で契約を結ぶことになり、原則契約を締結した時点で信託契約の効力が発生します。ただし、契約書に日付を記載し信託開始日を設定することや、農地法上の許可を得られた時点など、条件を付して信託契約を開始することも可能です。

他にも「委託者が認知症の診断を受けた時」など、条件を設定することも可能です。

このようなケースでは客観的に条件が整ったことを確認する必要があるため、条件が整ったかどうか人によって判断が分かれるようなあいまいな条件を付すことは避けた方がよいでしょう。

信託契約以外にも遺言によって家族信託を設定することも可能です。

遺言によって家族信託を設定する場合は、遺言者の死亡時に家族信託が設定されることとなります。

信託契約を行う場合は、自身の生活に必要となる財産がいくらになるかを正確に把握できないため、全財産を信託することはできません。しかし、遺言によって家族信託を設定する場合は、被相続人(亡くなった人)の全財産を信託契約することも可能です。

ただし、遺言により設定する場合は、死亡時にしか効力が発生しないため、高齢の家族の財産を管理するといったニーズに対応することができません。

 

家族信託の費用

家族信託にはどのような費用がかかるのでしょうか。家族信託の費用についても確認しておきましょう。

専門家に支払う費用

家族信託では複雑な法律知識を必要とするため、専門家に依頼するケースが多くあります。

家族信託の契約をサポートすることができる専門家とは弁護士、税理士、司法書士、行政書士等です。

ただし、家族信託はまだ活用事例が少なく、全ての専門家が扱えるわけではありません。上記にあげた士業の方でも家族信託を一件も行ったことがなく、ノウハウが無い方も多いのが現状です。そのため、家族信託を契約する際は家族信託の経験豊富な専門家を探すことが重要です。

>>家族信託に強い専門家のご紹介はこちらからお問い合わせください。

家族信託の契約にかかるコンサルティング料は財産額によって定められることが一般的です。コンサルティング料は財産額の1%程度で最低50万円~100万円程度と言われてます(どのぐらいの作業量をお願いするかによって料金が異なります)。

コンサルティング料は実際に信託契約を行わない場合も費用が発生する場合がありますので、注意が必要です。

実際に家族信託を契約することになった場合は別途契約書の作成に費用が掛かる場合もあります。契約書の作成手数料は10万円~20万円程度と言われています。

信託財産に不動産がある場合には不動産の登記にも費用がかかります。登記を司法書士等に代行して行ってもらう場合には法務局で全て代行してくれますが、代行にも費用がかかってしまいます。

家族信託は柔軟性が高く様々な契約ができる分、法律等の専門知識が無いとスムーズに契約や運営が難しい制度です。法律知識の無い方は専門家に支払う手数料はある程度覚悟しておいた方がよいでしょう。

 

公正証書作成費

家族信託を公正証書で作成する場合は別途公正証書の作成手数料がかかります。

公正証書の作成手数料も財産額によって異なりますが、信託財産が5,000万円程度の場合は5万円程度です。

家族信託は必ずしも公正証書にする必要はありませんが、公正証書にしておくことでより確実に契約書を作成することができます。

公正証書は公証役場で作成し、公証人立ち合いのもと作成されるため、確実に委託者の意思があったものと判定されます。家族信託で財産の分け方を指定する場合、財産を多くもらう相続人が作成させたものと疑われることもありますが、公正証書にしておくことでこのようなトラブルを避けることが可能です。

また、公正証書は書類を無くした場合でも再発行をすることが可能です。

家族信託は契約期間が長期間に渡るうえ、委託者が亡くなった後も効力が継続するため、書類がどこにいったわからなくなることも多くあります。公正証書にしておくことで紛失のリスクも避けることが可能となります。

 

銀行で申し込むことができる家族信託とは

銀行で申し込むことができるものに家族信託と類似の機能を持つ商品もあります。銀行で申し込むことができる信託商品についてみて行きましょう。

 

みずほ信託銀行の「安心の贈りもの」

みずほ信託銀行の安心の贈りものは受取人を指定して、委託者が死亡した際に事前に指定した受取人に渡すことができる商品です。

通常、死亡した場合は保有している財産は法定相続人がどのように分けるか協議して財産を配分します。しかし、みずほ信託銀行の安心の贈りものを契約していた場合、あらかじめ定められた金額を指定の相続人に遺すことができ、比較的早期に現金化することができます。
信託金額は500万円~3,000万円の範囲で信託することができます。ただし、信託できるのは現金のみで不動産等を信託することはできません。

遺し方は一括と年金形式で選ぶことができます。すぐに使ってしまいそうな相続人に財産を遺す際は年金形式にすることで安心して遺すことが可能です。

みずほ信託銀行の安心の贈りものは遺された家族のために財産の遺し方を決めることができる商品です。

 

三菱UFJ信託銀行の「家族安心信託」

三菱UFJ信託銀行の家族安心信託は遺言作成と同時に設定することで、遺された家族が相続した財産を年金形式で受け取ることができる商品です。

遺言で多額の財産を遺す場合、高齢の配偶者が相続する場合や、若い相続人が相続する場合には詐欺被害にあって財産を失ってしまう可能性や散財してしまう可能性があります。

家族安心信託を活用することで相続した財産を信託銀行で管理してくれるため、財産を一度に失うリスクを抑えることが可能です。

三菱UFJ信託銀行の家族安心信託は自分が亡くなったあとの相続人の生活を安定させるために活用できる商品です。

 

三井住友信託銀行の「家族リレー信託」

三井住友信託銀行の家族リレー信託は自分で年金として受け取りながら年金給付中に自分が亡くなったあとは指定した相続人が引き続き年金を受け取ることができる商品です。

例えば、3,000万円を信託し、毎月15万円ずつ本人が年金として受け取り、自分が亡くなった後は配偶者受け取る契約を行うとします。

この場合、本人が存命している間は本人に年金が支払われます。本人が亡くなったあとは信託した3,000万円が亡くなるまで配偶者が継続して年金を受け取ることができます。

家族リレー信託では指定された相続人が一部の資金を一時金で受け取る契約を行う事も出来ますので、一時金で200万円を受け取り、残りを年金で受け取ると言うことも可能です。

このような契約を行うことで、相続発生後の葬式費用等を一時金で賄い、その後の生活資金を年金で賄うことが可能です。

三井住友信託銀行の家族リレー信託は自分の生活だけでなく、遺される家族の生活も守ることができる商品です。

 

オリックス銀行の「家族信託サポートサービス」

オリックス銀行の家族信託サポートサービスはその名の通り、家族信託を銀行がサポートするサービスです。

オリックス銀行がサポートする内容は大きく分けて3つあります。
一つ目は「相続、資産承継にかかわる一般的な助言」です。
相続、資産承継においては様々な知識が必要となりますのでアドバイスを受けられることはメリットとなるでしょう。

二つ目は、財産管理や資産承継スキームの提案や構築支援です。家族信託等の信託契約は柔軟性が高く様々な契約を行う事が可能です。スキームの提案を受けることで最適な承継方法を探すことができます。

三つ目は司法書士や税理士等の紹介です。銀行は不動産の登記や税金の申告を行うことはできません。専門家と連携することで、家族信託の契約を円滑に進めることができます。

オリックス銀行の家族信託サポートサービスは2種類のコースがあります。

一つ目は通常コースで通常コースでは金銭と不動産全般の相談を行うことができます。

手数料は550,000円です

二つ目は自宅・金銭限定コースです。自宅・金銭限定コースは相談内容が自宅と金銭のみに限定されていますが、手数料は275,000円と通常コースよりも安く設定されています。

オリックス銀行の家族信託サポートサービスは家族信託を検討しているもののスキームや手続き方法に不安が残る方におすすめのサービスです。

 

なお、銀行の家族信託サービスを活用するより、個人的には家族信託を依頼するなら司法書士に依頼した方が良いと考えています(担当者のレベルなどの観点から)。また、家族信託は子ども(受託者)に多大な負担をかけることにつながりますので、現実的には遺言書など他の方法でカバーできるならその方が良いと考えています。

遺言書は何歳から書けばいい?相続税に強い税理士が徹底解説をご覧いただき、家族信託や遺言書のサポートが必要であれば、こちらからお問い合わせください。

 

家族信託の契約書はどのように作成すればよいか

家族信託を締結するためには契約書を作成する必要があります。家族信託を契約するにはどのような流れで行えばよいのでしょうか。

信託契約書に記載すべき事項

まず、前提となるのが、全ての事項において当事者が合意していることです。

家族信託の場合、当事者である委託者と受託者が合意していなければ契約は成立しません。

家族信託において当事者同士が合意しておくべきことは以下の通りです。

  • 信託契約の当事者が誰であるか(氏名・住所を示す)
  • 家族信託を行う目的
  • 信託財産の種類、金額
  • 信託財産を追加できるか否か
  • 信託財産の管理運営方法
  • 受託者の権限や義務
  • 委託者の権利
  • 受託者が死亡した場合の取り扱いについて
  • 受益者(氏名・住所を示す)
  • 受益者が亡くなった場合の取り扱いについて
  • 受益者が複数の場合、意思決定の方法
  • 受益者代理人(受益者の代わりに手続きができる人)の有無
  • 信託契約を変更する場合の手続方法
  • 信託の終了事由
  • 信託報酬
  • 契約に定めがない場合の意思決定の方法

信託契約では上記の内容について最低限記載しておくことが重要です。

家族信託では信託期間が数十年におよぶことも多く、あらゆる事態を想定し契約を締結しておくことが重要です。

そのため、利益を得ている受益者が亡くなることも考えられます。受益者が亡くなった場合、信託契約を継続して別の受益者が継続して利益を得るのか、それとも信託契約を終了させるのか等、長期にわたって契約することで起り得るあらゆる事態を想定しておかなければなりません。

家族信託の契約は必ずしも公正証書で行う必要はありませんが、公正証書で作成しておくことでより確実な契約書とすることが可能です。

公正証書で契約をする場合は公証役場まで出向いて作成する必要があります。

公証役場と事前の打ち合わせを行ったうえで、作成当日には運転免許証やパスポート等の本人確認書類と印鑑証明と実印が必要です。

 

家族信託契約後の手続き

家族信託の契約を完了すると次に信託口座を開設する必要があります。

受託者は自己の財産と分別して信託財産を管理する必要がありますので、家族信託を行う場合、専用の口座を開設する必要があるのです。

口座の名義は信託口座であることがわかるように「委託者〇〇受託者△△信託口」のように信託口座であることが分かるようにしておきます。このようにしておくことで、受託者が死亡した場合の口座の凍結や、受託者が破産した場合の口座の差し押さえを避けることができます。金融機関によっては信託口の口座開設にあたって契約書の提示を求められる場合もあります

信託財産に不動産が含まれる場合は信託された不動産であることを登記しておく必要があります。不動産登記は対外的にその不動産に対して誰がどのように権利を有しているかを示す機能があります。信託登記を行っていなければ受託者としての権限を行うことができませんので、不動産登記も必ず行う必要があります。

家族信託は契約することがゴールではありません。長期間継続する家族信託では財産の管理・運営や受益者への利益配分等を継続的に行うことになります。

また、法人が受託者となる商事信託とは違い、生身の人間が受託者となるため、死亡や意思能力の喪失等により信託契約を継続することが困難となる場合もあります。

そのため、信託契約後も状況に応じて契約書に沿うように継続的に手続きを行っていく必要があります。

 

自分で契約書を作成し、手続きすることも可能

家族信託契約は司法書士や行政書士等専門家に依頼して手続きを行うことが多くあります。

しかし、家族以外には相談せずに行いたい場合などは自分で知識を身に付けて手続きをすることも可能です。ただし、現実的には家族信託の契約を行い、財産の移転等を行うためには専門的な知識が必要です。司法書士などの専門家には守秘義務がありますので、安心して依頼できます。

>>こちらにメッセージをいただければ、家族信託に強い司法書士を厳選してご紹介いたします。

 

家族信託を司法書士や行政書士に相談するメリット

家族信託を司法書士や行政書士に相談することでどのようなメリットを得られるのでしょうか。具体的に確認していきましょう。

家族信託を契約する理由を明確にしてもらえる

家族信託の経験が豊富な司法書士や行政書士に相談することで、家族信託を契約する理由や目的を明確にすることができます。逆に言うと家族信託でできないことも明確化することができます。

家族信託ではできないことを明確にしておくことで、他の対策を検討する必要もあります。

 

家族信託以外の方法が無いかも相談できる

家族信託はあくまで手段であって、目的ではありません。他の方法が家族信託よりも、本来の目的を達成できる可能性もあります。

専門家に依頼することで、別のよりよい方法を教えてもらえる可能性もあります。

 

法務・税務において問題が無い契約を行ってもらえる

家族信託の契約手続きは複雑です。慣れない人にとって簡単なものではありません。

家族信託は当事者である家族で契約を完結させることができますが、法務や税務において問題の無い契約を行うことは非常に難しいでしょう。

専門家に依頼することで法務・税務面で問題が無い契約を行うことができると言う点は大きなメリットとなります。

 

家族信託のメリット・デメリット

家族信託にはメリットとデメリットがあります。それぞれを具体的に確認しておきましょう。

家族信託のメリット

家族信託のメリットは家族間で行うことができるため、柔軟に契約ができると言う点です。

信託銀行等が行っている商事信託の場合信託銀行側の都合によってある程度契約内容が限定されてしまいます。

しかし、家族信託であれば、家族間で合意をすれば柔軟に契約することが可能です。そのため、二次相続までふまえた信託契約や、当事者が認知症などで意思能力を喪失した際の対応等についても細かく設定することができます。相続対策や老後生活の安定などあらゆる目的に活用できる柔軟性は家族信託のメリットと言えるでしょう。

また、財産の内容や承継方法をあまり他人に知られることなく、手続きができる点も家族信託のメリットです。

金融機関で手続きをした場合、保有している財産に対して様々な勧誘を行ってくるケースもありますが、家族信託であればそのような心配はありません。家族間で多くの人に知られることなく手続きをできる点は家族信託が選ばれる理由の一つにもなっています。

 

家族信託のデメリット

メリットも多い家族信託ですが、万能ではありません。大きなデメリットとなるのが、受託者である家族に大きな負担がかかると言う点です。

受託者は財産を適切に管理する義務がありますので、手続きの遅延等によって損害が被った場合、受託者の責任となってしまいます。家族の一人に重い負担をかけることによって相続発生時に揉め事に発展するケースもありますので注意が必要です。

また、家族信託で契約された信託金額は遺留分算定の含まれるか否かはまだ判例が無く、遺留分に算定されるかどうかはわかりません。財産のうち大部分を家族信託で特定の相続人に遺すようなケースでは遺留分にも留意した方がよいでしょう。

 

家族信託に関する税金

家族信託に関する税金はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。家族信託に関する相続税と贈与税について確認しておきましょう。

 

家族信託が相続税の対象となるケース

家族信託で受益者が死亡し、受益者が変更となる場合は相続税の対象となります。

信託契約の内容が年金形式で支払われることとなっている場合も、総支払額が相続税の課税対象です。

例えば、3,000万円を毎年100万円ずつ支払うという受益権を相続した場合、相続税の課税対象となるのはその年で受け取る100万円ではなく、総支払額である3,000万円です。

 

家族信託が贈与税の対象となるケース

家族信託で委託者と受益者が異なる場合は贈与税の対象となります。

たとえば、祖父が孫に財産を支払う家族信託契約を締結するとします。孫は祖父から信託財産を受け取ったこととなりますので、贈与税の対象となります。

そのため、委託者が亡くなるまでは委託者兼受益者として、贈与税を発生させないように契約を行うケースが多いと言われています。

 

家族信託の活用例

家族信託は様々なケースで活用されています。具体的な活用事例を確認してみましょう。

家族信託を認知症対策として利用するケースの活用例

家族信託は認知症対策として利用することができます。具体的に活用例をみて行きましょう。

 

契約の概要

認知症対策で契約をする場合は委託者兼受益者が親で、受託者に子どもがなるケースが多くあります。

認知症対策で家族信託を活用する場合は以下のような事項を定めておくとよいでしょう。

  • 信託財産(金銭・不動産等)
  • 受託者の権限(不動産の場合、売却して良いか等)
  • 委託者兼受益者が認知症となったあとに受託者を監督する人を定めるか
  • 受託者を複数人定めておくか
  • 委託者が死亡した場合誰が相続するか

 

認知症になってから( 発症後)の対応

認知症になってからは契約に基づいて受託者が信託財産の管理・運営を行う必要があります。受託者の負担は重いものとなりますが、受託者を複数定めておくと相互に協力しあって信託事務を進めることができます。

また、「信託事務処理代行者」を定めて信託事務の一部を第三者に代行してもらうことも可能です。

 

家族信託を不動産の承継対策として利用するケースの活用例

家族信託は不動産の承継対策としても利用されます。具体的に活用例をみて行きましょう。

 

不動産の共有問題の解消

不動産を共有で相続した場合、売却や建て替えなどの意思決定は共有者全員で合意して行う必要があります。そのため、共有者のうち一人でも納得できない人がいる場合は不動産を売却したり処分することができないのです。

家族信託では管理・処分の権限を共有者のうち一人に集約することが可能です。そのため、財産の権利は相続人に平等に相続させ、管理・処分で揉めることが無いように信託設定することも可能です。

 

遺言を活用した場合との比較

遺言を活用した場合、不動産は「自分の相続の時に誰に遺す」ということしか定めることができません。しかし、不動産は代々承継していきたいと考えている方も多いでしょう。

遺言では、財産を受け取る人が誰に財産を遺すかを指定することはできませんが、家族信託であれば、「受益者連続」と言う機能を使うことで、自分が遺したい人に財産を遺すことが可能です。

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