相続に関する登記費用について、相続に強い税理士が徹底解説

親族が亡くなり、相続が起こると「相続手続き」を行わなければなりません。

そして、亡くなった方が自宅やマンションなど、不動産を保有していた場合には、不動産を亡くなった方から、相続人のものにするため、名義変更手続き、つまり「相続登記」を行う必要があります。

相続登記をしなければ、土地を失ったり、トラブルに巻き込まれる恐れがあります。

もちろん、登記手続き行うためには、税金の支払いや、専門家である司法書士に依頼するお金が必要です。

以下では、相続登記費用がいくらかかるかについて、司法書士が目安を解説しますのであわせてご覧ください。

 

※不動産の売却に関するご相談や資産運用に関するご相談なども承っております。資産運用のご相談に関してはこちらから問い合わせください。

 

相続登記とは?

被相続人(亡くなった方)が土地や建物などの不動産を保有している場合には、管轄の法務局に対し、相続による所有権移転登記の申請(相続登記)手続きを行います。

この相続登記手続きを行うことにより、不動産の持ち主が、亡くなった方から相続人に移ります。登記が完了するまでの日数は管轄の法務局の混雑具合により変わりますが、登記の申請後、概ね1~2週間です。

ちなみに、相続登記は、特に期限や登記手続きをしないことによる罰則等はありませんが、不動産の登記名義を真の所有者(ここでは相続人)にしておかなければ、後々トラブルにつながります。

したがって、できる限り早く相続登記手続きを完了しておくことをおすすめします。

相続登記にかかる費用とは?

相続登記手続きにかかる費用は、登録免許税や戸籍等の取得にかかるお金、そして、司法書士に依頼することによるお金の3種類があります。

登録免許税

登録免許税とは?

登録免許税とは、法律で定められた国税です。

相続や売買等によって所有権移転登記など、法律で定められた各種登記の申請を行うときは、登録免許税法などの法律で定められた登録免許税を国に支払わなければなりません。

これは銀行等を通じて支払うものではなく、不動産登記申請書に収入印紙を貼付することで、法務局に納付します。収入印紙は、郵便局などでも購入可能ですが、基本的に法務局に印紙売場が設置されていますので、登記申請と合わせて購入するのが一般的でしょう。

なお、相続登記の登録免許税の計算方法は以下のとおりです。

登録免許税=課税標準(土地建物などの不動産価格の合計額)×税率(原則1,000分の4=0.4%)

課税標準は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格とされており、具体的には、相続登記申請の際に添付する固定資産評価証明書記載の「本年度価格(○○年度価格、評価額)」のことです。

なお、登録免許税を計算する際、課税標準は、千円未満の端数は切り捨てます。2以上の土地や建物を一緒の登記申請手続きで名義変更する場合は、それぞれの価格を合算後に千円未満の端数を切り捨てます。

また、算出された登録免許税額については、百円未満の端数は切り捨てられ、価格が千円未満の場合は千円に切り上げます。

なお、相続登記の税率は、原則として1,000分の4=0.4%ですが、相続人でない第三者への遺贈の場合には贈与となり1,000分の20=2%となります。

 

たとえば、固定資産課税評価額が土地2,000万円、建物1,000万900円の相続登記の登録免許税は、以下の通り計算します。

  1. 課税標準の計算  2,000万円+1,000万900円=3,000万900円→1,000円未満の端数切捨→3,000万円
  2. 登録免許税の計算  課税標準3,000万円×税率0.4%=12万円

なお、令和2年4月1日に法律の改正により新設された配偶者居住権についても登記を行う必要があります。

配偶者居住権とは、簡単に言えば、のこされた配偶者が一定の条件を満たしたとき、亡くなった方が所有していた住居に無償で住むことができる制度です。

今後、相続登記と同時、または相続登記後に行われることが多くなると予想されます。

この配偶者居住権の設定にかかる登録免許税は、建物の評価額×1,000分の2(0.2%)です。

登録免許税がかからないケース

たとえば以下の場合には、登録免許税は免税となり、支払う必要がありません。

相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合

個人が相続により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したとき(租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税と登記申請書への記載が必要です)

引用後、一部修正:法務局:相続登記の登録免許税の免税措置について

補足すると、相続によって土地の所有権を引き継いだ相続人が、相続登記手続き未了のまま亡くなった場合で、2018年(平成30年)4月1日から2021年(令和3年)3月31日までの間に相続登記をするときは、登録免許税が免除されます。

たとえば、A➡B➡Cと相続があった場合に、不動産の名義が依然としてA名義のとき、A➡Bへの相続登記にかかる登録免許税は免税になります。

戸籍等取得費などの実費

管轄の法務局に対して相続による所有権移転登記申請手続きを行う際には、相続の事実を裏付ける各種証明書類を登記申請添付書類として法務局に提出を行います。

そのため、戸籍謄本類を収集する必要があり、取得費用が実費としてかかります。

必要書類と金額を以下にまとめました。

必要書類 金額
亡くなった方(被相続人)が、産まれてから亡くなるまでの戸籍謄本類
  • 戸籍全部・個人事項証明書(戸籍謄・抄本)1通450円
  • 除籍全部・個人事項証明書(除籍謄・抄本)1通750円
  • 改製原戸籍謄・抄本1通750円
  • 戸籍の附票1通300円
  • 除票の写し1通300円
相続人全員の戸籍謄本類
  • 戸籍全部・個人事項証明書(戸籍謄・抄本)1通450円
  • 住民票の写し1通300円
相続人全員の印鑑証明書 1通300円
固定資産税評価証明書 1通200円~400円※市区町村や物件の数によって異なります。
登記事項証明書

※添付書類ではなく、不動産の調査のために通常、登記完了前と完了後に取得します。

  • 書面請求1通600円
  • オンライン請求・送付1通500円
  • オンライン請求・窓口交付1通480円

※その他、必要書類を郵送で取得する場合には郵送費、法務局や役所の窓口に出向いて取得する場合には交通費などがかかります。

※被相続人が保有していた不動産を調査する場合には、名寄せ帳(1通300円)を利用することも多いです。名寄せ帳には、管轄の役所に被相続人が保有していた不動産のすべてが載っています。

司法書士に依頼する報酬

相続登記手続きを専門家である司法書士に依頼する場合には、当然ながら司法書士報酬がかかります。

司法書士報酬は、以前は「司法書士報酬額基準」というものがあり、どの事務所に依頼しても金額が一定でした。

しかし、現在は基準がなくなり、司法書士事務所ごとに自由に金額設定ができるようになりました。ただし、司法書士会の会則で、諸費用や金額、報酬をどのように算定したか依頼者に明示を行うため、あまりにも不合理な請求は行われないでしょう。

なお、ほとんどの司法書士事務所が以下のような算定方法で司法書士の報酬を決定しています。

基本報酬 + 別途報酬(オプション料金)

まず、相続登記申請の基本報酬が決定され、他に遺産分割協議書の作成や不動産の調査など作業が追加される場合は、別途報酬が加算される仕組みとなっています。

依頼された相続登記手続きにおいて、被相続人や相続人の数が多いとき、相続人が第3順位の場合(兄弟や甥姪)、不動産ごとに相続人が異なるとき、管轄法務局が増えるとき、相続不動産の数・評価額・地域によっても、別途報酬が加減されます。

不動産の評価額については、評価額が高いと相続登記手続きのリスクが高まることから、司法書士報酬も高くされていることもあります。

なお、以下のような特殊な手続きがある場合、一般的に別途報酬が加減されることがあります。

  • 特別代理人・成年後見人の選任申立書作成手続きは別途加算されます。
  • 公正証書遺言に基づく相続登記手続きの場合や相続人が1人の場合には、減額されるケースが多いようです。
  • 法定相続情報一覧図の取得手続きは別途加算されます。

法定相続情報証明制度は、管轄法務局で戸籍謄本などの必要書類を提出して手続きを行うことにより、「法定相続情報一覧図」を手に入れることができます。法的相続情報一覧図は、不動産の相続登記手続きや相続税申告への添付も行うことができ、相続手続きの負担軽減のために創設されました。

相続手続きを行うにあたって、法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本などの書類を何枚も発行しなくてよくなります。多くの不動産があるようなケースなどでは、法定相続情報一覧図を入手し、書類の手間を削減すると良いでしょう。

ちなみに、繰り返しとなりますが、登記手続きの専門家は司法書士です。税理士や行政書士に依頼することはできません。弁護士も権限はありますが、専門分野ではないため、あまり詳しくないことが一般的です。

司法書士の中でも、専門分野にばらつきがあり、会社の登記が得意な人もいれば、相続手続きに詳しい司法書士もいます。登記だけでなく、相続に関して様々なアドバイスをくれる司法書士を探すことをお勧めします。

相続登記は自分でできるの?

相続登記手続きを自分で行えば、司法書士報酬がかからないので、相続登記手続き費用を安く抑えられる、といい、失敗する方が多くいます。

相続登記手続きを自分で行うことは可能なのでしょうか?確かに、自身で行えるようなケースも中にはあります。

以下、自分でできるか、司法書士に依頼した方がいいか、判断のポイントを解説します。

まず、公正証書遺言がある場合や相続人が1人だけの場合は、比較的手続きが簡易なので、インターネット等でよく調べれば、自分でできるかもしれません。次に登記申請書ですが、多くの方が、役所のように申請書が法務局に完備されていて、それに記入するだけだと勘違いしています。

しかしそうではなく、不動産登記申請書は、自身で作成しなければなりません。相続の内容や不動産の数や所在地によって不動産登記申請書の記載方法が変わります。

いったん法務局へ登記申請を行うと、誤字脱字も含めて少しでも記載に間違いがあった場合、「補正」手続きとなり、申請者本人が法務局の窓口へ出向き、間違った部分を訂正する必要があります。

結局、相続登記手続きを自分で行う場合には、手続き完了まで相当な手間がかかります。さらに、必要書類は添付書類として法務局に提出しますが、相続登記手続きにおいて、意外に手間がかかるのが、必要書類の収集です。

特に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本類を収集するのが大変です。

戸籍の記載は専門用語が多く、亡くなった記載のある戸籍から順に遡って取得するのですが、初めてだとすべて揃えるのは結構な時間と手間がかかります。

預貯金の名義変更手続きとは異なり、必要書類も多く特殊なルール等もあるため、自ら書類を作成できないなど、手続きが難しいと感じる場合には、最初から専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。

また、以下の場合にも不動産登記申請書の記載方法や登録免許税に影響を与えます。

  • 被相続人が不動産を単独で保有していたのか共有で保有していたのか。
  • 建物が普通の建物か区分所有建物か。区分建物の場合、敷地権が付いているのかいないのか。
  • 不動産の筆数や所在地は、1つか複数か?不動産の筆数が複数の場合、法務局の管轄は1つか複数か?
  • 不動産所在地の管轄法務局が遠方の場合、直接法務局の窓口に申請するのか、郵送申請またはインターネットによるオンライン申請にするのか?オンライン申請の場合は、少々ハードルが高いがそれに対応可能か?
  • 相続人が複数の場合、遺産分割協議の内容により、1つの申請書で記載できるのか、それとも複数申請にするのか?
  • 相続人の中に未成年者や成年被後見人はいるか?それらの者がする遺産分割協議の内容によっては、裁判所による特別代理人の選任が必要な場合があるが、今回は該当するか?

これらの場合には、相続登記を自分で行うと、かなりの時間と手間がかかります。

また、誤った手続きを行ったり、自身ですすめようとすると、問題になることがあります。

たとえば、相続した不動産を、相続後に売却する場合などは、時間的余裕があまりありませんが、間違った手続きをしてしまうと売却自体ができなくなる等のリスクがあります。

また、相続人同士で意見が異なり、遺産分割協議でもめそうな場合なども自分で処理することはむずかしいでしょう。

仲良く揉めずに手続きを終えるためには、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。また、相続税申告が必要なときは、税理士に早めに相談しましょう。

※相続税の申告が必要かどうかは、「相続税はいくらからかかる?いくらまで無税?相続税の目安を税理士が解説」を参考にご確認ください。

その他相続登記費用に関する疑問なんでも解決

相続登記費用について、その他、気になる疑問にお答えします。

相続登記費用は誰が負担すべきか?

相続登記費用は、本来、誰が負担すべきなのでしょうか?法律上は、費用をだれが負担するかは、定められていません。したがって、相続人全員で、話しあって決定します。

一般的には、不動産を相続する相続人が負担することが多いです。不動産という資産を自分のものにするというメリットがあるからだと言われています。

その他には、預貯金や現金などの相続財産の中から捻出したり、相続財産を相続する割合によって按分したり、相続人全員で平等に負担したりするケースもあります。

なお、空き家の場合、相続登記手続きの手間やお金がかかるため、何世代も空き家の相続登記がなされず、近隣の住民に迷惑をかけるという社会問題になることがあります。

なるべく問題を先送りせず、専門家や行政機関と相談の上、早めに解決を図ることをおすすめします。

相続登記費用は必要経費になる場合があるので領収書を保存しておくこと

相続の際にかかる税金は、登録免許税と相続税がメインです。

なお、相続税を算定する際に、葬儀費用などは経費のように控除ができますが、相続登記費用は控除することができません。

また、相続登記費用(登録免許税、戸籍謄本類取得費などの実費、司法書士報酬)は、相続で引き継いだ不動産を売った場合の譲渡所得の算定に際して取得費として必要経費となります。

また、売却せず自己使用した場合には、農業所得、事業所得や不動産所得として、必要経費となることがあります。

したがって、相続登記費用の領収書は、きちんと整理して保管しておくことおすすめします。

司法書士報酬の相場は?

司法書士報酬の相場は、地域や事務所開業の年数など、どれだけのレベルを持っているか等によって異なります。

以下は、司法書士会連合会による全国の司法書士に向けた調査結果です。

平成30年(2018年)1月実施:相続によって建物一棟と土地一筆(固定資産の評価額の合計は1千万円)の所有権移転登記手続きの代理、戸籍謄本類五通の交付請求、登記原因証明情報(相続関係説明図と遺産分割協議書)の作成と、登記申請の代理を行ったケース

※日本司法書士会連合会ホームページより引用

低額者10%の平均 全体の平均値 高額者10%の平均
北海道地区 28,320円 60,983円 97,843円
東北地区 35,457円 60,667円 99,733円
関東地区 39,212円 65,800円 103,350円
中部地区 37,949円 63,470円 116,580円
近畿地区 45,842円 78,326円 118,734円
中国地区 37,037円 65,670円 111,096円
四国地区 40,683円 65,578円 99,947円
九州地区 38,021円 62,281円 96,892円

司法書士報酬の高い人と安い人がいますが、各地域の平均値は6~8万円となっており、そこまで大きな違いはありません。ただし、みんなが相続手続きに詳しいとは限りませんので、紹介してもらえる人がいれば、信頼できる方にお願いしましょう。

なお、司法書士に依頼する場合、戸籍謄本類を自分で収集した場合には、司法書士報酬を値引いてくれることがあります。

当然ですが、司法書士に依頼する作業量が多いか少ないかによって、報酬の金額は上下します。司法書士の料金差は、司法書士が相続アドバイスまで対応するか、職員が窓口になって事務的に対応するかの違いなどありますが、基本的には、どれだけの作業をお願いするかによって変わります。

相続登記費用の計算例

ここで、一般的な相続登記について、手続きの費用の一例をご紹介します。

たとえば、夫が亡くなり、相続人が妻と子供2人(成人して別戸籍)、相続財産は、預貯金と固定資産課税評価額が土地2,000万円、建物1,000万900円の場合の相続登記の費用を以下に簡単に計算します。

相続登記費用明細 金額
登録免許税 12万円※計算方法3,000万円×0.4%
戸籍等取得費などの実費 9,420円

内訳

  • 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本類(除籍謄本2通、改製原戸籍2通、戸籍謄本1通、戸籍の附票1通)
    750円×4+450円+300円=3,750円
  • 相続人の戸籍謄本類(3通)450円×3通=1,350円
  • 相続人の住民票の写し(3通)300円×3通=900円
  • 相続人の印鑑証明書(3通)300円×3通=900円
  • 固定資産税評価証明書(2通)300円×2通=600円
  • 登記事項証明書(登記前と登記後各1通)480円×4=1,920円
司法書士報酬

(税込)

88,000円(仮)
合計 217,420円

この記事のまとめ

相続は一生に何回も経験することではありません。

時間と手間と安心のために、専門家である司法書士に依頼することをお勧めします。

 

※この記事の内容は、記事執筆時点での法律に基づいています。その後の法律改正等により、記事の内容が変更される可能性があります。その点も含めて、専門家に確認することをおすすめします。

 

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税理士 坂根 崇真 / インフルエンサー

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【プロフィール】
一般社団法人 全国第三者承継推進協会 理事
税理士
【著書】
相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (2021年3月18日発売)

【メディア実績】

Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎ゴールドオンライン ほか

【メディア運営等】
税理士による相続メディア:あんしん相続税 などを運営(合計:月間10万PV)
Twitter 1万フォロワー(2020年7月31日時点)

【経歴等】
業界最大手のデロイトトーマツ税理士法人の出身であり、個人資産百億円規模の方の税務相談経験や、相続税申告経験を数多く有している。

現在は、士業など専門家の協会員1,500人以上の団体 全国第三者承継推進協会の理事に就任しており、後継者不在による廃業を防ぐための相続対策・支援活動などを行っている。