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相続全般

不動産取得税は相続した時はかからないが注意点アリ。税理士が解説

2020年6月14日

土地や建物といった不動産は、持っているだけで「都市計画税」や「固定資産税」といった税金がかかります。また、売った時には所得税がかかります。

そして、もらったときには不動産取得税がかかります・・・

ポイント

✔不動産取得税は相続時にはかからない

✔不動産取得税は贈与、相続時精算課税でもらったときはかかる

✔不動産は持っているだけで固定資産税などのコストがかかる

✔不動産は管理が大変、株式への組み換えも検討しよう

なお、不動産を相続した場合は高い割合で相続税の申告が必要です。

目次

不動産取得税は相続時にはかからない

「不動産取得税」という名前から、相続において不動産を取得した際、不動産取得税がかかるのではないかと思われる方が多いです。

しかし、相続によって取得した不動産に対して不動産取得税はかかりません。

ただし、相続の方法によっては不動産取得税が発生するケースもあるので注意が必要なため、後ほど解説していきます。

 

不動産取得税とは

不動産取得税は名前のとおり、不動産を取得した際にかかる税金です。

この場合の取得という言葉は幅広く、

  • 不動産の売買
  • 新築
  • 増改築
  • 贈与

などが挙げられます。

これらを起因としてその不動産の所有権が自分のものになる場合、不動産の取得時に課税されます。

注意点として、不動産をお金を出して買った場合だけでなく、贈与など、タダで取得した場合も不動産取得税がかかります。

なお、不動産を取得した場合には、取得した理由にかかわらず、住まいの市区町村へ申告書を提出しなければなりません。それによって不動産取得税の計算が行われ通知書が郵送される流れになります。

また、繰り返しですが、不動産取得税は、相続によって不動産を引き継いだ場合は基本的にかかりません。ただし、相続の一連の手続きの中で、不動産取得税が例外的にかかる場合もありますので、それは後ほど解説します。

 

不動産取得税はどんな時に発生する?

不動産を取得する場合は相続以外にも様々な場合があります。ここでは不動産取得税が発生する代表的な例をいくつか紹介しておきます。

  • 不動産を購入した場合
  • 不動産の贈与を受けた場合
  • 新築・増改築を行った場合

これらの取得には有償、無償は全く関係ありませんので、お金を払って購入、新築・増改築した場合も身内や他人から無償で贈与を受けた場合にも同様に不動産取得税が発生します。

つまり、相続で引き継いだお金で家を建てた場合や、生前に家を贈与で受け取った場合には不動産取得税がかかるので注意が必要です。

 

相続したときに不動産取得税がかかるケース

不動産取得税は、相続によって不動産を引き継いだ時にかからないと上記で解説しましたが、相続の方法等によっては、不動産取得税を支払わなければなりません。

通常の相続で取得したと思っていても、下記の条件に該当すれば不動産取得税を支払わなければなりません。

 

相続時に不動産取得税が発生するケース① 生前贈与

相続税対策の方法として、「生前贈与」がよく用いられます。

この生前贈与を行う場合は不動産取得税がかかってしまうので気を付けなければなりません。

生前贈与とは、贈与をする人が死亡する前に、お金や不動産などの財産を、子どもや孫などに無償で渡す行為です。

相続税は亡くなったときの財産額に比例して多額にかかる税金です。

したがって、贈与を行うことで相続財産を減らし、将来相続税がかかる財産を減らしておくことができれば相続税を減らすことが可能です。

なお、贈与については、年間で110万円超の財産を受け取ったときは贈与税がかかりますが、贈与を受ける財産が不動産のときは、贈与税だけでなく、不動産取得税もかかります。

不動産の金額によっては高い税額となってしまう場合もあるので、事前に税理士に相談したうえで贈与を行うと良いでしょう。

なお、生前贈与による相続税対策については「【相続税対策5選】生前にすべき節税方法を相続税に強い税理士が解説」でより詳しく解説しています。

 

相続時に不動産取得税が発生するケース② 遺言等により法定相続人でない方が不動産を引き継いだとき

相続時には、亡くなった方が遺言書を残している場合があります。

通常は、相続人しか亡くなった方の財産を引き継ぐことができませんが、一方で、生前に遺言書を作成した場合は相続人以外の人に財産を引き継ぐことができます。

これににより、遺言書によって相続人以外の方が財産を引き継ぐことも往々にしてあります。

たとえば、子どもが存命のうちに、孫に遺産をのこすケースです。

その場合には、不動産を相続した人に対し、不動産取得税がかかる可能性があります。

なお、遺言書による財産ののこし方には、以下の二種類の方法があります。

  1. 「特定遺贈」
    「××さんにAの不動産を遺贈する」など、どの財産をだれにのこすか決める遺言
  2. 包括遺贈」
    「××さんに相続財産の〇%を遺贈する」など、どの財産をだれにわたすか明確に決めていない、割合指定による遺言

このうち、特定遺贈と呼ばれる方法では不動産取得税がかかります。

 

相続時精算課税制度を適用している場合には不動産取得税がかかる

相続によって財産を引き継いだ場合、不動産取得税はかかりません。

ただし、「相続時精算課税制度」を活用したときは不動産取得税がかかります。

 

相続時精算課税制度について

相続時精算課税とは、財産の贈与を受けるときに使える特例です。

贈与税は、年間110万円まで贈与を受けても非課税とされています。

しかし、60歳以上の両親や祖父母から贈与を受け、この制度を使うことにしたときは、総額2,500万円まで贈与を受けても非課税となります。

通常の贈与であれば、110万円を超える贈与に対しては贈与税が発生し、最高で55%と、かなり高い税金がかかります。

一方で、相続時精算課税を活用すれば、2,500万円以下の贈与なら贈与税はかからず、また、2,500万円超の贈与を受けたときであっても、20%の一律税率をかけて計算される贈与税を支払うだけで済みます。

ただし、相続時精算課税制度を活用したときは、贈与税は低く抑えられますが、相続が起こった際に相続税がかかってしまいますので、単純に相続税対策として使うにはむずかしい制度です。

なお、相続時精算課税の活用事例については「相続時精算課税制度とは?活用事例を相続税に強い税理士が徹底解説」でより詳しく解説しています。

 

相続時精算課税で財産を引き継いだときは不動産取得税がかかる?

相続時精算課税は、「相続」と言う名前がついていますが、贈与の方法の特例です。

先ほど説明した通り、相続の場合は不動産取得税がかかりませんが、一方で、贈与の場合はかかります。

したがって、相続時精算課税による贈与を行った場合、通常通り、不動産取得税がかかります。

 

不動産取得税をいくら支払わないといけない?

不動産取得税は、購入や贈与によって入手した不動産の評価額(固定資産税の課税標準額)に、原則として4%の割合をかけることで支払額が計算されます。

しかし、不動産取得税は現在、令和3年(2021年)3月31日までに取得した土地及び住宅であれば3%、住宅以外の建物(家屋)は4%の税率です。

また、これらのうち、宅地については固定資産税の課税標準額の50%を控除した金額に3%や4%の税率を乗じて支払うべき不動産取得税の計算を行います。

ただし、このうち土地及び住宅、宅地について税率を下げる措置は令和3年3月31日までの一時的な軽減措置となっています。

したがって、それ以降については土地及び住宅、住宅以外の家屋すべてに対して4%の一律税率となります。

不動産取得税の基準となるのは固定資産税の評価額ですが、この金額は、現実に売買が行われる時の取引価格(時価)ではなく、独自の算出方法で計算された金額です。

ほとんどの場合、売買時の取引価額(時価)よりも低い金額設定となっており、土地であれば取引価格(時価)の約70%、家屋の場合は50~60%といわれています。

つまり、実際の不動産相場をベースに税金がかかるわけではありませんので、一般的には、単純に取引相場に4%をかけた金額よりは少ない税負担になると言えるでしょう。

 

不動産取得税の軽減措置とは

不動産取得税の計算方法は原則として上記の方法ですが、一定の条件を満たす場合は軽減措置を受けることができる場合があります。

この軽減措置を適用することができれば、本来支払うべき不動産取得税の金額を少なくすることができます。

なお、軽減措置は自分でお住まいの都道府県に申請しなければ受けることはできませんので、たとえば下記の条件を満たしているようであれば必ず申請を行いましょう。

また、新築物件と中古物件ではそれぞれ条件が異なる為、申請する際は気を付けなければなりません。

 

新築の場合の不動産取得税の軽減措置について

建物にかかる不動産取得税の軽減措置の条件(新築のケース)

建物部分の不動産取得税については、下記の要件を満たすと軽減措置の対象となります。

  • 不動産を取得する者が居住用やセカンドハウス等として使用する場合
  • 床面積が、50㎡以上240㎡以下の場合(戸建て以外の貸家の場合は40㎡以上240㎡以下)

上記の要件を満たしている場合、その建物の建築年月日に基づいて控除額が算出されます。

控除額は100万円から最高1,200万円となっており、建築年月日が1997年4月1日以降の場合、最高額の1,200万円となります。

その場合における不動産取得税の計算方法は次のようになります。

(固定資産税評価額 - 控除額(1,200万円) )×0.03(3%)

 

土地にかかる不動産取得税の軽減措置の条件(新築のケース)

土地部分の不動産取得税については、まず建物が上記の条件を満たしていることが条件になっています。

それに加えて土地の取得後3年以内に建物を新築していること、又は建物を新築して1年以内に土地を取得すること等が条件になっています。

これらの条件を満たした場合、不動産取得税は次の通り計算を行います。

(固定資産税の評価額×50%×3%)- 控除額(以下の1、2のどちらか金額の大きいほう)

  1. 45,000円
  2. (1㎡あたりの土地の固定資産の税評価額×50%)×(床面積×2(最高200㎡)×3%)

中古の場合の不動産取得税の軽減措置

建物にかかる不動産取得税の軽減措置の条件(中古のケース)

建物部分の不動産取得税は、下記の条件を満たすと軽減措置の対象となります。

  • 不動産を取得する者が居住用やセカンドハウス等として使用する場合
  • 床面積が50㎡以上240㎡以下の場合
  • 昭和57年(1982年)1月1日以降に建築された建物であること又は、新耐震基準に適合していない場合において取得者が入居する前に新耐震基準に適合するための工事を実施すること又は、昭和56年(1981年)12月31日以前に建築された建物で新耐震基準に、適合していること

上記の要件を満たしている場合、その建物の建築年月日に基づいて控除額が算出されます。

控除額は100万円から最高1,200万円となっており、建築年月日が1997年4月1日以降であれば、最高額の1,200万円となります。その場合における不動産取得税の計算方法は次の通りです。

(固定資産税の評価額 - 控除額(1,200万円) )×税率3%

 

土地にかかる不動産取得税の軽減措置の条件(中古のケース)

土地部分にかかる不動産取得税は、建物が上記の条件を満たしていることが条件になっています。

それに加えて、土地の取得後1年以内に、建物を取得していること、又は建物を取得して1年以内に土地を取得することが条件になっています。

これらの条件を満たした場合、不動産取得税は次の通り計算を行います。

(固定資産税の評価額×50%×3%)-控除額(以下の1、2のどちらか金額の大きいほう)

  1. 45,000円
  2. (1㎡あたりの土地の固定資産税の評価額×50%)×(床面積×2(最高200㎡)×3%)

 

不動産を相続した場合に気を付けること5選

相続によって不動産を取得するケースは多くありますが、不動産を相続した場合に見落としがちな手続きや注意事項がいくつかありますのでここでご紹介します。

ここで紹介した注意事項を忘れていると、親戚間の相続トラブルや、予想だにしなかった税金がかかってしまったり、子供や孫の世代にまで影響を及ぼしかねませんので、司法書士や税理士などの専門家に事前に相談すると良いでしょう。

不動産の相続登記を忘れないこと

よくある失敗事例として、親から相続によって引き継いだ不動産の名義変更手続きを行わず、被相続人のままにして放置しているケースがあります。

相続登記を行わなければ不動産の名義は被相続人のままとなってしまい、さらに子供や孫の世代になってしまうと、そこから名義変更を行うには、親戚中を回って同意書や押印などを行わなければならなくなります。

また、この相続登記をしていないことにより他の相続人の担保や借金などの差し押さえ資産になってしまい、相続登記がスムーズに行えないなど相続トラブルにつながりかねません。

相続登記を行うためには、法務局に書類の提出等の手続きを行う必要がありますが、書類に不備等があれば訂正等を行い、何度も提出しなければなりません。

したがって、登記については、専門家である司法書士に申請手続きを依頼することが一般的です。

 

相続した不動産を処分すると税金がかかる場合がある

相続手続き完了後に相続した不動産を売ってしまう方も多いですが、売ったことにより儲けが出ると、譲渡所得税がかかります。

また、不動産を売却するときは、相続開始から3年10か月以内に売ることで税金を減らせる特例や、3,000万円の特別控除など、様々な特例があります。

これらの特例を適用せずに確定申告を行ってしまうと、非常に多額の税金を支払うことになりますので、相続した不動産を処分する場合には事前に税理士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。

 

相続した不動産を持っていると、税金がかかるケースは色々ある

相続した不動産を売却せずに、そのまま自己所有資産とする場合には固定資産税がかかります。

また、相続した不動産がアパートや貸家であった場合は家賃収入が発生します。

家賃収入によって収入が増えることは喜ばしいですが、一方で、収入が増えるということは所得税や住民税、場合によっては国民健康保険税などが増加し、税負担が大きくなる場合があるということを覚えておきましょう。

 

相続登記完了後の遺産分割をやり直すと不動産取得税がかかる

相続人同士でどのように遺産分けを行うかを決め(遺産分割協議と呼びます)、相続登記を行いますが、この相続登記を行った後に遺産分割協議のやりなおしを行い、不動産の所有者を当初の相続人から別の相続人に変更したときは、贈与とみなされるため不動産取得税がかかります。

遺産分割協議のやり直しが起きないよう、家族で話し合いをしっかりと行っておくことが非常に重要です。

 

相続登記を行うと登録免許税がかかる

不動産取得税は、不動産を相続で引き継いだときはかかりませんが、一方で、その不動産を登記することによって登録免許税の支払いが必要となります。

先述した通り、登録免許税は相続だけに限らず、売買や贈与により、所有権移転の登記が行われることによって発生する税金です。

登録免許税の税率は、不動産の種類と移転登記の起因となった内容によって変わり、相続による建物や土地の登記にかかる登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の0.4%、売買や贈与などの場合は原則として2%となっています。

ただし、土地や建物にかかる登録免許税については、期間限定の軽減制度や免税措置もあるので、それらに該当しないかどうかを事前に確認すると良いでしょう。

なお、司法書士などの専門家に依頼すると、それらを踏まえて一番トクできる方法で手続きを進めてくれるでしょう。

 

相続時にかかる可能性がある税金

相続時に発生する可能性のある税金としては、まず、「相続税」が挙げられます。

相続税は、ご両親などの親族がお亡くなりになった際、遺産を引き継いだときにかかる税金です。

すべての方にかかる税金では無いですが、現金や預金などのお金、そして、建物や土地などの不動産といった、すべての財産をたした金額が3,000万円超の場合にかかる可能性があります。

※相続税については「相続税はいくらからかかる?いくらまで無税?相続税の目安を税理士が解説」の記事をご覧ください。

また、相続が起こった時は、相続税以外の税金の支払いも必要であり、登録免許税が代表的です。

登録免許税は、土地や建物といった不動産の持ち主などの情報を変更する場合に支払わなければなりません。

これは、土地や建物などの不動産を引き継いだのであれば、所有者の名義を亡くなった方から財産を引き継いだ相続人に不動産の登記変更手続きを行う必要があり、その際、登録免許税がかかるからです。

登録免許税は不動産売買時においても発生する税金ですが、それだけでなく、相続が起こった際にもかかる税金のため注意が必要です。

なお、不動産の登記手続きは、一般的に、専門家である司法書士に、どのようにすべきか相談し、対応の依頼を行います。登録免許税がいくらかかるかは、司法書士があわせて教えてくれるケースが多いでしょう。

 

不動産にかかる税金まとめ

税金の種類どんなときに税金がかかる?
相続税相続によって財産を引き継いだとき
贈与税贈与によって財産を引き継いだとき
不動産取得税贈与や売買等によって不動産を手に入れたとき
登録免許税相続や贈与、売買等によって不動産等の登記変更等を行ったとき
固定資産税等不動産等を持っているとき
所得税不動産からの賃貸収入があるときや不動産を売却したとき等

存命中に贈与などによって不動産を引き継いだ場合は不動産取得税の支払いが必要です。一方で、相続によって不動産を引き継いだ場合、不動産取得税はかかりません。

しかし、不動産を相続によって引き継いだ場合であっても、相続税はもちろん、登録免許税など、その他の税金がかかることは言うまでもありません。

なお、どのような税金がかかるかや、いくらぐらい税金がかかるか把握することは簡単ではありませんし、期限までに行わなければならない手続きも数多くあります。

 

相続が起こった場合は早めに税理士などの専門家に相談するとともに、まだ相続が起こっていない場合においても、のこされた家族のために、事前に負担を減らしましょう。

 

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配当金生活に必要な資金やどのような運用方法があるか、「株の配当金生活は可能?いくら必要?高配当株の利回りは?税理士が解説」などで解説しています。月間30,000人の方がご覧になっていますので、こちらの記事も、ぜひあわせてご覧ください。

>>株の配当金生活は可能?いくら必要?高配当株の利回りは?税理士が解説

相続のこと、いつかやろうでは遅いです

※上記は、おひとり分の相続税申告書と、お預かり資料のボリュームの参考です。

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