【税制改正速報】令和2年度税制改正大綱 検討事項

令和2年度税制改正大綱 検討事項についてまとめました。
なお、令和2年度税制改正大綱の基本的考え方については、【税制改正速報】令和2年度税制改正大綱をご覧ください。

検討事項

1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、平成 30 年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

2 デリバティブを含む金融所得課税の更なる一体化については、総合取引所における個人投資家の取引状況も踏まえつつ、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備する観点から、多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある方策の必要性を踏まえ、検討する。

3 小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

4 カジノから生じる所得にかかる適正な申告の確保等の観点から、国内外のギャンブル課税の状況、今後制定されるカジノ管理委員会規則等に基づく詳細な規制の具体化の状況、最新の技術の活用可能性等も踏まえつつ、関連する納税環境の整備について、IR 事業の開業に向けて、今後検討する。その際、事業者の事務負担や国際競争力の確保についても考慮する。

5 自社株式を対価とした公開買付け等に係る課税のあり方については、会社法制の見直しを踏まえ、組織再編税制等も含めた理論的な整理を行った上で、必要な税制措置について検討する。

6 自動車関係諸税については、技術革新や保有から利用への変化等の自動車を取り巻く環境変化の動向、環境負荷の低減に対する要請の高まり等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、その課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。

7 原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する。

8 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。

9 ガス供給業に係る収入金額による外形標準課税については、小売全面自由化され 2022 年に導管部門が法的分離するガス供給業における他のエネルギーとの競合や新規参入の状況とその見通し、行政サービスの受益に応じた負担の観点、地方財政や個々の地方公共団体の税収に与える影響等を考慮しつつ、これらの法人に対する課税の枠組みに、付加価値額及び資本金等の額による外形標準課税を組み入れていくことについて、引き続き検討する。

【付記】連結納税制度の見直し

グループ通算制度の基本的な仕組み

1 適用法人

適用法人について、次の法人を除外するほか、連結納税制度と同様とする。

(1)青色申告の承認の取消しの通知を受けた日から同日以後5年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの

(2)青色申告の取りやめの届出書の提出をした日から同日以後1年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの

2 適用方法

適用方法並びに承認の取消し及び適用の取りやめの方法について、次の見直しを行うほか、連結納税制度と同様とする。

(1)親法人の設立事業年度の翌事業年度からグループ通算制度を適用しようとする場合の承認申請期限の特例について、親法人がその資産の時価評価による評価損益を計上する必要がある場合及び設立事業年度が3月以上の場合には適用できないこととする。

(2)承認の却下事由に、備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録していることその他不実の記載又は記録があると認められる相当の理由があることを加える。

(3)青色申告の承認を取り消された場合には、グループ通算制度の承認の効力を失うこととし、グループ通算制度固有の取消事由を設けないこととする。

3 納税主体等

(1)親法人及び各子法人が法人税の申告を行う。

(2)親法人及び各子法人には、通算グループ内の他の法人の法人税について連帯納付責任がある。

(3)親法人の電子署名により子法人の申告及び申請、届出等を行うことができることとするほか、ダイレクト納付についても所要の措置を講ずる。

4 事業年度

適用法人の事業年度は、連結納税制度と同様に、親法人の事業年度に合わせたみなし事業年度とする。

5 所得金額及び法人税額の計算

(1)損益通算

① 欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する。

② グループ通算制度の適用法人又は通算グループ内の他の法人の所得の金額又は欠損金額が期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額を上記①の所得の金額又は欠損金額とみなして上記①の損金算入又は益金算入の計算をする。

(2)欠損金の通算

① グループ通算制度の適用法人の欠損金の繰越控除額の計算について、控除限度額は通算グループ内の各法人の欠損金の繰越控除前の所得の金額の50%相当額(中小法人等、更生法人等及び新設法人については、所得の金額)の合計額とし、控除方法は連結納税制度と同様とする。

(注)更生法人等の判定は各法人について行うこととし、通算グループ内のいずれかの法人が新設法人に該当しない場合にはその通算グループ内の全ての法人が新設法人に該当しないこととする。

② 通算グループ内の他の法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額を当期の所得の金額又は過年度の欠損金額とみなす。

③ グループ通算制度の適用法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、欠損金額及び中小法人等以外の控除限度額(欠損金の繰越控除前の所得の金額の 50%相当額をいう。)で期限内申告において通算グループ内の他の法人との間で授受した金額を固定する調整をした上で、その適用法人のみで欠損金の繰越控除額を再計算する。

(3)欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を帰属させるためあえて誤った当初申告を行うなど法人税の負担を不当に減少させる結果となると認めるときは、税務署長は、上記(1)②並びに(2)②及び③を適用しないことができる。
(4)通算グループ内の全ての法人について、期限内申告における所得の金額が零又は欠損金額がある等の要件に該当するときは、上記(1)②並びに(2)②及び③を適用しない。
(5)利益・損失の二重計上の防止

投資簿価修正制度を次の制度に改組する。

① 通算グループ内の子法人の株式の評価損益及び通算グループ内の他の法人に対する譲渡損益を計上しない。

② 通算グループからの離脱法人の株式の離脱直前の帳簿価額を離脱法人の簿価純資産価額に相当する金額とする。

③ グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入をする子法人で親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれないものの株式について、株主において時価評価により評価損益を計上する。

(注)グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入後損益通算をせずに2月以内に通算グループから離脱する法人については、上記①から③までを適用しない。

(6)税率

税率は、通算グループ内の各法人の適用税率による。なお、中小法人の軽減税率の適用対象所得金額は、年 800 万円を所得法人の所得の金額の比で配分した金額とする。

(注)上記の配分は、所得法人の所得の金額が期限内申告における所得の金額と異なる場合には、原則として期限内申告における所得の金額により配分する。

(7)税効果相当額の授受

内国法人が他の内国法人との間で通算税効果額を授受する場合には、その授受する金額は、益金の額及び損金の額に算入しないこととする。

(注)上記の「通算税効果額」とは、グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として内国法人間で授受される金額をいう。

6 申告及び納付

(1)グループ通算制度の適用法人は、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により法人税及び地方法人税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書を提出しなければならないこととする。

(注)添付書類の提出方法及び電子情報処理組織による申告が困難である場合の特例についても、大法人と同様とする。

(2)仮決算による中間申告は、通算グループ内の全ての法人が行わなければならないこととする。

(3)グループ通算制度の適用法人の申告については、連結納税制度と同様に、申告期限の延長特例による延長期間を原則2月とする。

(4)災害等により決算が確定しない場合等の申告期限の延長及び上記(3)の延長特例の申請は親法人が行うものとし、親法人に延長処分があった場合におけるその子法人及び上記(3)の延長特例を受けている通算グループに加入した子法人は、申告期限が延長されたものとみなす。

(5)グループ通算制度の適用法人について、通算グループからの離脱があった場合には、その離脱後に開始する事業年度について、上記(3)の延長は効力を失う。

(6)国税通則法の災害等による期限延長制度により通算グループ内のいずれかの法人の申告期限が延長された場合には、他の法人についても申告期限の延長があったものとする。

7 グループ通算制度の適用開始、通算グループへの加入及び通算グループからの離脱

(1)グループ通算制度の適用開始、通算グループへの加入又は通算グループからの離脱の際のみなし事業年度について、次の見直しを行うほか、連結納税制度と同様とする。

① 事業年度の中途で親法人との間に完全支配関係を有することとなった場合の加入時期の特例について、その完全支配関係を有することとなった日の前日の属する会計期間の末日の翌日を承認の効力発生日及び事業年度開始の日とすることができる措置を加える。

② 離脱法人の離脱日に開始する事業年度終了の日を親法人の事業年度終了の日とする措置を廃止する。

(2)グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入に際して行う資産の時価評価について、対象外となる法人を次の法人とする。

① 適用開始時の時価評価課税の対象外となる法人

イ 親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる子法人

ロ いずれかの子法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる親法人

② 加入時の時価評価課税の対象外となる法人

イ 適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人

ロ 通算グループ内の新設法人

ハ 適格組織再編成と同様の要件として次の要件(加入の直前に支配関係がある場合には、(イ)から(ハ)までの要件)の全てに該当する法人

(イ)親法人との間の完全支配関係の継続要件
(ロ)当該法人の従業者継続要件
(ハ)当該法人の主要事業継続要件
(ニ)当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件
(ホ)上記(ニ)の各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件

(注)上記の各要件は、組織再編成の適格要件と同様とする。

(3)上記(2)①又は②の法人以外の法人のグループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金を切り捨てる。

(4)上記(2)①又は②の法人のグループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金及び資産の含み損等について、次のとおり、支配関係発生から5年経過日と開始又は加入から3年経過日とのいずれか早い日まで、制限を行う。

① 支配関係発生後に新たな事業を開始した場合には、支配関係発生前に生じた欠損金及び支配関係発生前から有する資産の開始・加入前の実現損から成る欠損金を切り捨てるとともに、支配関係発生前から有する資産の開始・加入後の実現損を損金不算入とする。

② 原価及び費用の額の合計額のうちに占める損金算入される減価償却費の額の割合が 30%を超える場合には、通算グループ内で生じた欠損金について、損益通算の対象外とした上で、特定欠損金(その法人の所得の金額を限度として控除ができる欠損金をいう。以下同じ。)とする。

③ 上記①又は②のいずれにも該当しない場合には、通算グループ内で生じた欠損金のうち、支配関係発生前から有する資産の実現損から成る欠損金について、損益通算の対象外とした上で、特定欠損金とする。

(注)制限の対象となる資産の実現損の額は、組織再編税制における特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度と同様とする。

(5)次の法人については、上記(4)の対象外とする。

① 親法人との間(親法人にあっては、いずれかの子法人との間。②において同じ。)に支配関係が5年超ある法人

② 通算グループ内のいずれかの法人と共同事業を行う法人として、次の法人イ 加入の直前に親法人との間に支配関係がない法人で上記(2)②ハに該当するもの

ロ 開始又は加入の直前に親法人との間に支配関係がある法人で次の要件の全てに該当するもの

(イ)当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件
(ロ)上記(イ)の各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件
(ハ)当該法人の上記(イ)の主要な事業の事業規模拡大2倍以内要件又は特定役員継続要件

(注)上記の各要件は、組織再編成の欠損金の制限におけるみなし共同事業要件と同様とする。

ハ 非適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人で共同で事業を行うための適格株式交換等の要件のうち対価要件以外の要件に該当するもの

(6)グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金(現行:特定連結子法人の連結納税制度の適用開始又は連結グループへの加入前の欠損金)のうち上記(3)及び(4)により切り捨てられなかったものは、特定欠損金とする。

(7)通算グループからの離脱

① 連結納税制度と同様に、通算グループから離脱した法人は、5年間再加入を認めない。

② 通算グループから離脱した法人が次に掲げる場合に該当する場合には、それぞれ次の資産については、直前の事業年度において、時価評価により評価損益の計上を行う。

イ 主要な事業を継続することが見込まれていない場合(離脱の直前における含み益の額が含み損の額以上である場合を除く。) 固定資産、土地等、有価証券(売買目的有価証券等を除く。)、金銭債権及び繰延資産(これらの資産のうち帳簿価額が 1,000 万円未満のもの及びその含み損益が資本金等の額の2分の1又は 1,000 万円のいずれか少ない金額未満のものを除く。)

ロ 帳簿価額が 10 億円を超える資産の譲渡等による損失を計上することが見込まれ、かつ、その法人の株式の譲渡等による損失が計上されることが見込まれている場合 その資産

(8)その他

① グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の譲渡損益調整資産の譲渡損益及びリース取引に係る延払損益で繰り延べているもの(1,000 万円未満のものを除く。)並びに特定資産の買換え等に係る特別勘定の金額(1,000 万円未満のものを除く。)については、連結納税制度と同様に、時価評価の適用除外となる法人に該当する場合を除き、その繰り延べている損益の計上及びその特別勘定の金額の取崩しを行う。

② 通算グループからの離脱前の譲渡損益調整資産の譲渡損益及びリース取引に係る延払損益で繰り延べているもの並びに特定資産の買換え等に係る特別勘定の金額については、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次のとおりとする。

イ 上記(7)②イに該当する場合 その繰り延べている損益(1,000 万円未満のものを除く。)の計上及びその特別勘定の金額(1,000 万円未満のものを除く。)の取崩しを行う。

ロ 譲渡損益調整資産の譲渡損で繰り延べている金額が 10 億円を超えるものの戻入れが見込まれ、かつ、その法人の株式の譲渡等による損失が計上されることが見込まれている場合 その繰り延べている損失の計上を行う。

各個別制度の取扱い

次に掲げる個別制度については、親法人及び各子法人が申告を行うことに鑑み個別計算を原則としつつ、企業経営の実態や事務負担、制度趣旨・目的、濫用可能性等を勘案し、それぞれ次のとおりとする。また、他の各個別制度についても、同様の考え方により、適切な仕組みとする。

1 受取配当等の益金不算入制度

(1)関連法人株式等に係る負債利子控除額を、関連法人株式等に係る配当等の額の 100 分の4相当額(その事業年度において支払う負債利子の額の 10 分の1相当額を上限とする。)とする。

(2)関連法人株式等又は非支配目的株式等に該当するかどうかの判定については、100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人全体の保有株式数等により行う。

(3)短期保有株式等の判定については、各法人で行う。

2 外国子会社配当等の益金不算入制度

外国子会社の判定については、連結納税制度と同様とする。

3 寄附金の損金不算入制度

(1)寄附金の損金算入限度額の計算の基礎となる資本金等の額について、資本金の額及び資本準備金の額の合計額とする。

(2)寄附金の損金不算入額は、各法人において計算する。

4 貸倒引当金

100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人間の金銭債権を貸倒引当金の対象となる金銭債権から除外する。

5 特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用制度及び資産の譲渡等損失額の損金不算入制度について、欠損等法人に該当するかどうかの判定及びその適用は、各法人で行う。
6 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度

(1)民事再生等一定の事実による債務免除等があった場合に青色欠損金等の控除前に繰越欠損金を損金算入できる制度について、グループ通算制度の適用法人の控除限度額は、当該法人の損益通算及び青色欠損金等の繰越控除前の所得の金額と通算グループ内の各法人の損益通算及び青色欠損金等の繰越控除前の所得の金額の合計額から欠損金額の合計額を控除した金額とのうちいずれか少ない金額とする。

(2)民事再生等一定の事実による債務免除等があった場合に青色欠損金等の控除後に繰越欠損金を損金算入できる制度及び解散の場合の繰越欠損金の損金算入制度について、グループ通算制度の適用法人の控除限度額は、当該法人の損益通算及び青色欠損金等の繰越控除後の所得の金額とする。

(3)損金算入の対象となる債務免除益等の金額について、グループ通算制度においては、債務免除に係る債権を有する者等から除かれている法人を、親法人、適用対象となる法人及び債務免除等の相手方である法人の事業年度が同日に終了する場合のその相手方である通算グループ内の法人とする。

7 中小判定

次の制度における中小法人の判定について、通算グループ内のいずれかの法人が中小法人に該当しない場合には、通算グループ内の全ての法人が中小法人に該当しないこととする。

(1)貸倒引当金
(2)欠損金の繰越控除
(3)軽減税率
(4)特定同族会社の特別税率の不適用
(5)中小企業等向けの各租税特別措置

8 所得税額控除

所得税額控除額は、各法人において計算する。

9 外国税額控除

(1)通算グループ内の各法人の控除限度額の計算は、基本的に連結納税制度と同様とする。

(2)通算グループ内の各法人の当期の外国税額控除額が期限内申告書に記載された外国税額控除額と異なる場合には、期限内申告書に記載された外国税額控除額を当期の外国税額控除額とみなす。

(3)当期の外国税額控除額と期限内申告書に記載された外国税額控除額との過不足額は、進行年度の外国税額控除額又は法人税額においてその調整を行う。

(4)通算グループ内の各法人が外国税額控除額の計算の基礎となる事実を隠蔽又は仮装して外国税額控除額を増加させること等により法人税の負担を減少させようとする場合には、上記(2)及び(3)は適用しない。

10 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除及び還付制度は、各法人において適用する。
11 特定同族会社の特別税率

特定同族会社の特別税率については、各法人において計算する。ただし、次の調整を行う。

(1)留保金額の基礎となる所得の金額は、損益通算後の所得の金額とする。

(2)所得基準の基礎となる所得の金額は、損益通算前の所得の金額とする。

(3)留保金額の計算上、通算グループ内の法人間の受取配当及び支払配当はなかったものとした上、通算グループ外の者に対する配当の額として留保金額から控除される金額は、①に掲げる金額を②に掲げる金額の比で配分した金額と③に掲げる金額との合計額とする。

① 各法人の通算グループ外の者に対する配当の額のうち通算グループ内の他の法人から受けた配当の額に達するまでの金額の合計額

② 通算グループ内の他の法人に対する配当の額から通算グループ内の他の法人から受けた配当の額を控除した金額

③ 通算グループ外の者に対する配当の額が通算グループ内の他の法人から受けた配当の額を超える部分の金額

12 欠損金の繰戻しによる還付制度

(1)通算グループ内の各法人の繰戻しの対象となる欠損金額は、各法人の欠損金額の合計額を還付所得事業年度の所得の金額の比で配分した金額とする。災害損失欠損金額についても同様とする。

(注)上記一7(4)②及び③により損益通算の対象外とされる欠損金額は、配分の対象としない。

(2)解散等の場合の還付請求の特例について、通算グループ内の法人における対象となる事由は、親法人の解散、子法人の破産手続開始の決定並びに各法人の更生手続開始及び再生手続開始の決定とする。

13 特別税額控除

(1)試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)については、次のとおりとする。

① 通算グループを一体として計算した税額控除限度額と控除上限額とのいずれか少ない金額(以下「税額控除可能額」という。)を各法人の調整前法人税額の比で配分した金額を各法人の税額控除限度額とする。

② 通算グループ内の他の法人の各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額が確定申告書に記載された各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額と異なる場合には、確定申告書に記載された各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額を各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額とみなす。

③ 上記②の場合において、税額控除可能額が確定申告書に記載された税額控除可能額に満たないときは、法人税額の調整等を行う。

(2)その他の特別税額控除制度については、上記一5(1)及び(2)の措置に基づく各法人の法人税額の一定額を限度とする。ただし、上記一5(1)②の措置を前提とした濫用防止のための措置その他の措置を講ずる。

14 その他の租税特別措置等

(1)適用除外事業者

通算グループ内のいずれかの法人の平均所得金額(前3事業年度の所得の金額の平均)が年 15 億円を超える場合には、通算グループ内の全ての法人が適用除外事業者に該当することとする。

(2)資産の譲渡に係る特別控除額の特例について、100%グループ内(現行:連結グループ内)の各法人の特別控除額の合計額が定額控除限度額(年 5,000 万円)を超える場合には、その超える部分の金額を損金不算入とする。

(3)過大支払利子税制

損金不算入額は、各法人において計算する。ただし、適用免除基準(対象純支払利子等の額が 2,000 万円以下であること)の判定については、連結納税制度と同様とする。

(4)その他の租税特別措置等については、それぞれの制度の目的や仕組み、グループ通算制度の趣旨等に配慮しつつ、上記一5(1)②の措置を前提とした濫用防止のための措置その他所要の措置を講ずる。

租税回避行為の防止

グループ通算制度に関しては、多様な租税回避行為が想定されることから、上記一5(3)及び7(2)から(8)まで並びに二9(4)の措置のほか、連結納税制度と同様に、包括的な租税回避行為を防止するための規定を設ける。

その他の整備

1 質問検査権、罰則、徴収の所轄庁等について、連結納税制度と同様の措置を講ずる。
2 青色申告制度について次の見直しを行い、グループ通算制度を青色申告制度を前提とした制度とする。

(1)青色申告の承認を受けていない法人がグループ通算制度の承認を受けた場合には、青色申告の承認を受けたものとみなす。

(2)グループ通算制度の承認を受けている法人が青色申告の承認を取り消される場合には、取消しの効果は遡及しないこととする。

(3)グループ通算制度の承認を受けている法人は、青色申告の取りやめをできないこととする。

(4)グループ通算制度の適用法人に対する国税庁長官、国税局長及び税務署長による帳簿書類についての必要な指示について、連結納税制度と同様とする。

適用関係

1 グループ通算制度の適用

グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。

2 経過措置

連結納税制度からの移行に伴い、次の経過措置を講ずる。

(1)連結納税制度の承認は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度においては、グループ通算制度の承認とみなす。

(2)連結法人は、連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができる。

(3)連結納税制度における特定連結欠損金個別帰属額を、グループ通算制度における特定欠損金額とみなす。

(4)連結欠損金の繰越控除制度において更生法人等として連結欠損金の控除限度額を連結欠損金の控除前の連結所得の金額とされていた連結グループ内の子法人は、上記一5(2)①の更生法人等とみなす。

(5)各個別制度についても、連結納税制度からグループ通算制度への移行のための必要な経過措置を講ずる。

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税制改正勉強会-令和2年度税制改正

2019年12月28日に、税理士および税理士事務所の職員を対象に、令和2年度税制改正勉強会を開催します。

注意事項
※1 本記事は2019年12月12日に公表された、与党税制改正大綱に基づき記載しております。
※2 2019年12月12日現在、閣議決定されていないため、実際の改正内容と異なる場合があります。
※3 本記事に記載された内容に従って行動された結果生じた損失について、弊社では一切の責任を負いかねます。

 

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