
個人の飲食店で必要経費になるのは、売上原価や、その年の事業に必要な費用です。支払ったお金を整理するときは、事業との関係、私用との区分、費用になる時期、資産として扱う支出かを順に見ると判断しやすくなります。領収書は大切な資料ですが、金額に加えて用途や取引の内容が分かることも役立ちます。
仕込みの帰りに店用の消耗品と自宅の買い物を一緒に買った、厨房設備の修理と改良をまとめて請求された、店と自宅で同じ通信サービスを使っている。こうした場面を想定すると、費目の名前だけでは答えが出ない理由が分かります。店の実態を説明できる資料と、判断の順番が必要になります。
この記事では、2026年分の個人事業の飲食店を中心に、経費の考え方、主な支出と証拠の組合せ、判断に迷ったときの進め方を紹介します。法人では役員給与や交際費などに固有のルールがあるため、個人の話と分けて見ていきます。
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- 経費を整理するとは、買い物を店の仕事につなぐこと
- 迷った支出は、四つの順番で見てみる
- 主な費目と、残しておきたい証拠の組合せ
- 食材・酒類は、仕入から在庫と原価へつなぐ
- 家賃・光熱費・通信費は、契約と使い方を見る
- 私用が混ざる通信費を、仮定例で整理する
- 給与とまかないは、受け取る人と実態を整理する
- 厨房設備は、買った年に払った額と費用を分けて見る
- 修理と改装は、工事の中身が分かる資料を残す
- 借入返済は、元本と利息が分かる状態にする
- 広告・予約・決済は、契約と精算を一緒に見る
- 会食や他店調査は、目的と内容を説明できるようにする
- 支払った年と、費用になる年を合わせて見る
- 個人・法人・税目で、同じ数字の使い方が変わる
- 証拠は、支払の記録と仕事の内容を結び付ける
- 経費を増やす前に、店に必要な支出かを考える
- 判断に迷うものを、専門家へ伝えられる形にする
- 飲食店の経費のお悩みをお聞かせください
経費を整理するとは、買い物を店の仕事につなぐこと
経費の整理を始めると、「どの勘定科目に入れればよいか」が気になることがあります。もちろん科目をそろえることは大切ですが、その前に、何のための支出で、どの期間の取引かを明らかにすると、その後の記帳が進みます。
同じ飲食代でも、店主の私的な食事、業務に関係する会食、他店の調査では事情が違います。同じ厨房への支出でも、食材、長く使う設備、通常の修理では扱いが変わります。店主が分かっている用途を、領収書や請求書へつなぐところが出発点です。
必要経費は、個人の事業所得を計算するための情報です。総収入金額から必要経費を差し引いて所得を求めますが、銀行から出た金額をそのまますべて差し引く計算ではありません。借入返済や設備購入、私用の支出など、別の整理をするものがあるためです。
経費を正しく整理すると、申告の数字だけでなく、店に何の負担がかかっているかも見やすくなります。食材、家賃、給与、決済手数料などの中身が分かれば、費用の増減を営業の状況と一緒に考えられます。
迷った支出は、四つの順番で見てみる
費目ごとの一覧を見る前に、次の順番で情報を集めると、単純な「経費になる・ならない」から一歩進めます。正確な答えを出す前でも、判断に使う材料は店で準備できます。
表は横にスクロールできます。
| 順番 | 見ること | 用意すると役立つ情報 |
|---|---|---|
| 事業との関係 | 店の売上や業務に何のために使ったか | 品目、用途、目的、関係する相手 |
| 私用との区分 | 店用と自宅・家族用が混ざっていないか | 使用の記録、面積などの区分の根拠 |
| 計上する時期 | その年の費用か、未払い・前払いか | 納品日、対象期間、契約、請求内容 |
| 費用か資産か | 在庫、設備、返還される保証金、返済等か | 棚卸、設備明細、契約、返済予定表 |
個人の必要経費の基本は、収入を得るために直接要した売上原価等と、その年に生じた販売費・一般管理費などです。家事上の費用は別に扱い、家事関連費は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合、その部分を整理します。
この順番を使うと、判断が止まっている理由が見えてきます。「事業用とは分かるが、設備か消耗品か迷う」「用途は分かるが、私用部分の根拠がない」などです。迷っている場所が分かれば、明細を集めるのか、使い方を記録するのか、専門的な判断を求めるのかを選びやすくなります。
主な費目と、残しておきたい証拠の組合せ
次の表は、経費の扱いを自動的に決める表ではありません。飲食店でよく出てくる支出について、取引の中身を説明するための資料を整理したものです。
表は横にスクロールできます。
| 支出・費目 | 見ること | つなげて残す資料 |
|---|---|---|
| 食材・飲料 | 仕入と原価、在庫、廃棄や用途 | 納品書・請求書、棚卸、用途の記録 |
| 店舗家賃・共益費 | 店舗用の範囲、契約期間、保証金等 | 契約、請求、振込・支払記録 |
| 水道光熱・通信 | 業務用の範囲、対象期間 | 請求書、使用の実態、区分の根拠 |
| 従業員給与 | 対象者、勤務、支払、家族給与の条件 | 給与・勤怠・支払の記録、必要な届出 |
| 広告・予約・決済サービス | 契約内容、利用期間、手数料 | 契約、請求・精算明細、掲載内容 |
| 厨房設備・内装・備品 | 資産か、取得と使用開始、特例 | 品目別の見積・請求、取得・使用開始の記録 |
| 修理・改装 | 維持修理か、価値・使用期間を増すものか | 工事明細、内容や施工前後が分かる資料 |
| 借入の支払 | 元本と事業用の利息 | 返済予定、残高、利息の明細 |
| 会食・他店調査 | 業務目的と私的な食事の区分 | 日時、相手、目的、調査内容、領収書 |
国税庁の記帳の手引にある一般的な費目は、科目を整理する際の参考になります。自店では、その科目へ入れる取引の事実が分かるよう、元資料と用途を組み合わせます。
会計ソフトで同じ科目を使い続ける場合も、新しい契約や商品が増えたときは、取引の内容を見直すと役立ちます。前回と同じ購入先でも、今回は何を買ったかによって、資産や私用部分の整理が違うことがあるためです。
食材・酒類は、仕入から在庫と原価へつなぐ
食材や酒類は、店の営業に直接つながる支出です。ただ、購入額とその年の売上原価が同じになるとは限りません。年の初めにあった在庫と、年末に残った在庫も原価の計算に関わるためです。
例えば年末の営業に備えて仕入れ、その一部が翌年の営業へ残る場面では、支払った日だけを見ても、その年に使った原価の全体は分かりません。期首在庫、仕入、期末在庫を整理することで、売上へ対応する原価が見えてきます。
店でできる準備は、納品書や請求書を残すことと、決算日の在庫を把握できるようにすることです。商品名や数量が分かる資料を残しておけば、在庫の金額を確かめるときにも役立ちます。
廃棄、自家消費、従業員へのまかないなど、販売以外に使ったものは用途も記録します。厨房では同じ食材でも、使われた先によって税務で考えることが変わるためです。「仕入れた食材がどう使われたか」を店の運用の中で見えるようにしておくと、その後の整理が進みます。
在庫の実物を数える作業と、税務上どの年の原価へ入るかを考える作業はつながっていますが、役割が違います。まず資料と現物の情報をそろえ、その情報を原価の計算へ渡す流れを作ると、申告の時期に経緯を探し直す負担が軽くなります。
家賃・光熱費・通信費は、契約と使い方を見る
店舗の家賃は、毎月同じ金額を払っていると、通帳に残る数字だけで処理したくなる支出です。契約を見ると、家賃、共益費、返還される保証金など、性質の違うものが含まれていることがあります。
開業時や更新時のまとまった支払は、内訳と契約が分かる状態にしておくと、費用の時期や資産等の扱いを考えやすくなります。実際に返還される金額と、その年の費用を分けるためにも、支払記録と契約を結び付けます。
水道光熱費や通信費は、店だけで使っているか、自宅や私用と共用しているかを見ます。店用の請求と自宅用の請求が分かれていれば説明しやすくなります。共用なら、利用実態や区分の根拠を整理します。
契約者の名前だけで用途が分かるとは限りません。店主名義でも営業に使うものがあり、店の支払であっても私用が混ざることがあります。契約の内容と使い方を一緒に残すことで、領収書の表面だけでは見えない事情が伝わります。
毎月同じ割合を使っている場合も、その割合の元になった使い方を確かめられる資料があると、店の状況が変わったときに見直せます。店舗移転、営業時間の変更、利用する端末の変更などで、前提が変わることもあるためです。
私用が混ざる通信費を、仮定例で整理する
店と私生活で同じ通信サービスを使う場面を考えます。割合を先に決めるより、店の仕事でどのように使っているかを記録し、合理的に区分できる範囲を考える順番です。
ここでは、個人店の税込通信費11,000円について、利用実態の記録によって事業部分70%を合理的に区分できることが別途確認済み、と仮定します。単位は円です。70%は説明のための仮定で、推奨割合や当センターの実績ではありません。
表は横にスクロールできます。
| 区分 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 事業部分 | 11,000×70% | 7,700円 |
| 私用部分 | 11,000×30% | 3,300円 |
| 合計 | 7,700+3,300 | 11,000円 |
請求書の11,000円と、事業分7,700円、私用分3,300円がつながる計算です。帳簿の事業部分だけを見ても、請求全体と区分の根拠へ戻れるようにしておくと、後で説明しやすくなります。
この例で大切なのは、計算が合うことと、70%とした根拠を説明できることの両方です。計算だけなら簡単でも、実際の利用と合う割合かは店の事実から考える必要があります。通信用途を記録した資料と請求書、計算のメモを一緒に残すと、その関係が見えます。
「仕事でも使っている」とだけ伝えるより、予約対応、仕入先との連絡、業務用の作業など、使い方を説明できる方が判断の材料になります。一方、何を記録すれば合理的な区分に使えるか迷うなら、その段階から専門家と整理できます。
この例は税込経理での費用の区分を説明しています。消費税の仕入税額控除や、所得税額そのものを計算する例ではありません。税目ごとに計算の目的を分け、今回作った数字をどこへ使うかが分かるようにします。
給与とまかないは、受け取る人と実態を整理する
従業員へ払う給与は、働いた人、勤務、支給、実際の支払の記録を対応させます。店の営業を支える支出でも、資料に残る人と勤務の実態がつながっていることが、経費や給与の税務を整理する材料です。
家族が店を手伝っている場合は、個人の家族給与の特別な扱いも関係します。生計を一にする家族への給与は原則の取扱いと、青色事業専従者給与、白色の事業専従者控除を分けて考えます。勤務の実態、届出、支払などの要件が材料になります。
普通の従業員の給与と同じ処理にする前に、事業形態と家族の状況、どんな働き方をしているかを整理すると、必要な情報を集めやすくなります。給与の台帳だけでなく、店での役割や勤務が分かる記録も役立ちます。
まかないは、食材の用途の記録と、従業員等への食事提供の税務が関係します。誰に、どう提供し、本人がどれだけ負担しているかなどによって、給与として課税するかの判断が変わります。店主の自分の食事と、従業員への食事提供を分けて記録すると、その後の整理が進みます。
食事提供の条件には適用時点による違いもあります。毎日の提供記録や負担の情報を残し、対象年の条件と合わせて扱うことで、金額の合計だけでは見えない事情を確かめられます。
給与やまかないの詳しい判定を、領収書のまとめ作業だけで終えようとすると難しくなります。まず受け取る人と実態を見えるようにし、判断が必要な部分を分けることが、専門家へ伝える準備にもなります。
厨房設備は、買った年に払った額と費用を分けて見る
冷蔵庫や厨房機器、内装への支出は、店の資金に大きく影響します。購入の時点でお金が出ても、税務上の費用は減価償却によって使用期間へ配分する扱いが通常です。少額資産などの特例もあるため、取引ごとの条件をそろえて判断します。
必要な情報は、品目、取得額、取得日、使用開始日、事業での使い方などです。工事や設備がまとめて請求された場合も、どの部分にいくらかかったかをたどれる明細があると役立ちます。
設備を買うかどうか考える段階では、価格だけでなく、店で何のために使い、いつから稼働する予定かを整理できます。購入した後は、実際の使用開始と契約・請求・支払をつなげて残すと、その年の処理を考えやすくなります。
特例の扱いは取得時期や申告の条件によって変わることがあります。過去に同じくらいの金額で買ったものと、今回も必ず同じ扱いになるとは限りません。元資料に日付と品目が残っていれば、当年の条件で照合しやすくなります。
経費の一覧を見る目的は、設備を何でも日々の消耗品へ入れることではなく、必要な情報をそろえ、費用の計算へつなぐことです。店の資金の支出と申告上の費用を分けて見ると、設備投資の後の数字も理解しやすくなります。
これから新宿で飲食店を開く方は、税務の準備と一緒に開業資金の計画も整えておきましょう。融資支援の内容や担当者は、下のページでご覧いただけます。
修理と改装は、工事の中身が分かる資料を残す
設備の故障を直した、厨房の使い勝手を改善した、店舗を改装した。どれも営業のための支出ですが、通常の維持修理か、価値や使用可能期間を増す支出かによって扱いが変わります。
請求書に「修繕」と書いてあっても、その言葉だけで処理が決まるわけではありません。工事の内容、どの部分がどう変わったかが判断の材料です。見積、工事の明細、施工前後の状況が分かる資料をまとめます。
故障した部品を交換しただけなのか、新しい機能を加えたのか、複数の工事が一緒になっているのかを説明できると、税務の判断を進めやすくなります。店主が口頭で聞いていた説明も、業者の明細などへつなげられれば、後から伝えやすくなります。
修理と設備更新を迷っているときは、営業上の必要性と資金の支出を考えながら、税務の扱いへ使う情報もそろえられます。経費になるかという視点だけで購入を急ぐより、店に必要な工事の中身と時期が見えていることが判断に役立ちます。
借入返済は、元本と利息が分かる状態にする
借入の毎月の引落額には、元本返済と利息が含まれることがあります。元本は借入残高を減らすもので、事業のための借入利息は必要経費として別に扱います。返済予定表や金融機関の明細を使うと、内訳をたどれます。
設備を借入で買った場合は、設備の取得、借入の残高、減価償却、返済元本、利息がそれぞれ続きます。支払の記録だけを一つにまとめるより、資料を対応させることで、費用と資金の動きが見えやすくなります。
利益が出ているのに資金が減っていると感じたとき、返済元本や設備支払も含めて見ると理由を考えやすくなります。必要経費の計算と、銀行から出たお金の合計は別の数字だからです。
税務の専門家へ説明するときは、返済額の総額だけでなく、どの借入か、残高と内訳が分かる資料があるかを伝えます。開業時の資料が残っていれば、借入の使途と設備等の支出のつながりも整理しやすくなります。
広告・予約・決済は、契約と精算を一緒に見る
予約サービス、広告掲載、デリバリー、決済などの支出は、請求や売上からの差引きで支払われることがあります。通帳に残る金額だけでは、売上や手数料の内訳が分かりにくい場面です。
契約と精算明細を合わせると、何のサービスを、どの期間使い、どの費用が差し引かれたかを整理できます。売上の総額、返金、手数料、振込額が同じ明細のどこに出るかを見ることも役立ちます。
広告やサービスには、支払の時期と提供期間が違うものもあります。掲載や利用の期間を残しておくと、今年の費用へ入る部分を考えやすくなります。毎月の請求が同じ名前でも、新しい契約へ変わったときは内容を見直します。
サービスの料金や処理方法は契約によって異なるため、自店が利用する現在の資料を基に進めます。経費の科目だけを過去の帳簿へ合わせるより、どの売上や利用とつながるかが分かる形にすると、後で費用の増減を考える材料にもなります。
会食や他店調査は、目的と内容を説明できるようにする
他店の料理やサービスを見ることは、飲食店の業務に関係する場合があります。ただ、私的な食事との区分は、店主が飲食店を経営しているという属性だけでは見えません。実際に何を調べ、仕事へどう関係するかが判断の材料になります。
日時、相手、目的、調査の内容など、実際に行ったことを領収書と一緒に残します。料理の構成を見た、店の運営に関係する打合せをしたなど、支出の事情が分かると、業務との関係を検討しやすくなります。
後からメモを整える場合も、実際に分かる内容を残します。業務目的が不明なものは、その不明な状態も含めて整理すると、判断が必要な取引を選びやすくなります。記録を作ることと、経費性が認められることは別ですが、事実を説明できる記録には意味があります。
法人では交際費等の損金算入について固有のルールもあります。個人の必要経費の考え方だけで会社のすべての会食費を処理するのではなく、事業形態と取引の実態を合わせて扱います。
支払った年と、費用になる年を合わせて見る
個人の必要経費は、原則としてその年に債務が確定した金額を確認します。支払済みでも翌年のサービスなどの前払いであれば、当年の費用にならない場合があります。一方、支払前でもその年の債務が確定していれば、必要経費になる場合があります。
年末の請求書は、支払日だけでなく納品日や対象期間が分かるようにまとめます。飲食店では、食材の納品と請求の締め、銀行からの支払が別の時期になることがあります。請求書を年内・翌年の支払に分けるだけでなく、いつの取引かを見ます。
現金主義の特例を適用する場合や、減価償却など別の計上方法を使うものは、その条件に沿って整理します。まず自店の記帳方法を把握し、その方法で続けられるようにすることが役立ちます。
前年にまとめた資料があるなら、今回も同じ場所に未払いと前払いを残せると、年をまたぐ取引を追いやすくなります。毎年申告の前に記憶から探すのではなく、普段の請求書整理へ対象期間を加えるだけでも準備が進みます。
個人・法人・税目で、同じ数字の使い方が変わる
個人事業の必要経費と、法人税で会社の損金にする範囲は、同じ説明ですべて扱えるわけではありません。法人の役員給与や交際費などには、固有の区分や要件があります。
個人から法人へ移った年には、どの事業が支出したものか、契約や資産がどう移ったかも材料になります。同じ店で営業を続けていても、個人と会社の帳簿に何を記録するかを期間と事実で整理します。
所得税・法人税の費用と、消費税の仕入税額控除も計算の目的が違います。給与は課税仕入れに含まれず、貸付金の利子等は消費税の非課税取引です。所得税で必要経費になるから、同じ額がすべて消費税の控除へつながるという仕組みではありません。
設備についても、費用へ配分する計算と消費税の扱いは、それぞれの制度で考えます。店の支出を一つの合計へまとめるより、事業形態、対象年、税目をそろえて扱うことで、どの資料が必要かを見つけやすくなります。
証拠は、支払の記録と仕事の内容を結び付ける
経費の資料は、領収書だけとは限りません。請求書、契約、納品書、精算明細、銀行明細、業務の記録を組み合わせることで、何が起きたかを説明しやすくなります。
例えば、領収書には店名と金額しか載っていなくても、品目や用途の記録があれば、その支出の背景が分かります。反対に詳しい請求書があっても、支払や使用開始、店での用途が分からなければ、別の情報を集めることになります。
領収書を失くした場合は、請求書の再発行や取引明細、実際の支払が分かる記録などを探します。メモだけで完結させようとせず、分かる事実をつなぐことで、確認できる範囲が広がります。
紙の資料と、メールやウェブで受け取る電子取引の資料は、保存方法も整えます。電子データの保存には要件があり、個人・法人や税目によって保存条件・期間が異なることもあります。資料を取り出せる状態にすることと、税務の条件に沿って残すことを一緒に進めます。
店主が用途を知っているうちに残した短いメモは、記帳する人や税務の専門家と事実を共有する材料になります。日々の営業の中で、無理なく残せる情報を選ぶことが、年末の資料整理にもつながります。
経費を増やす前に、店に必要な支出かを考える
経費について調べるきっかけが、「税金を少しでも抑えたい」ということもあるでしょう。判断するときは、税務上の費用になるかに加え、店にとって必要な買い物か、資金がいつ出ていくかを見ます。
買い物で手元資金が減る額と、税金が減る額は同じとは限りません。設備なら費用へ配分する期間も関係します。不要な支出を増やすより、既にある取引を正しく記録し、使える制度の条件を整理する方が、店の状況を考えやすくなります。
年内の設備購入を考えるなら、営業に必要な理由、使い始める予定、支払、手元資金の見通しをそろえてから、税務の条件と一緒に検討します。税金だけでなく、翌月の仕入や給与などの支払へどう影響するかも店の判断材料です。
必要経費の整理が進むと、費用が増えた理由や、繰り返す支出も見やすくなります。節税の検討は、利益、支出、納税資金を含めて行うものとして、経費の一覧からもう一段広い視点へつなげられます。
判断に迷うものを、専門家へ伝えられる形にする
経費の処理が分からないとき、先に税務の答えを全部出そうとする必要はありません。何を買い、何のために使い、いつから使い、どの資料があるかを整理すると、その後の判断を進めやすくなります。
表は横にスクロールできます。
| 迷っているもの | まず伝えられること | 整理の価値 |
|---|---|---|
| 私用が混ざる支出 | 契約と利用の状況、残る記録 | 業務部分を説明する材料が分かる |
| 設備・工事 | 見積・請求、取得・使用開始、工事の内容 | 資産と費用、対象年を考えやすくなる |
| 家族給与・まかない | 働き方、支払、食事提供と負担 | 人と実態に合う条件を整理できる |
| 支払が年をまたぐもの | 納品、対象期間、支払状況 | 費用になる年をたどれる |
| 資料が足りない支出 | 分かる日付・相手・内容、残る明細 | 再取得や追加確認の道筋が見える |
税務の専門家と事実を共有することで、資料が不足しているのか、制度の判断が必要なのかを分けられます。記帳を依頼する場合も、店側で残す情報と、専門的な扱いを求める部分を整理する材料になります。
毎月判断が止まる支出があるなら、その都度困るより、記録の残し方を決めておくと経理を続けやすくなります。今年の申告へ向けた整理と、翌年からの経理の改善を並べて考えられます。
飲食店の経費のお悩みをお聞かせください
「厨房設備を買ったが帳簿への入れ方が分からない」「店と自宅の通信費が混ざっている」「家族の給与やまかないを整理したい」。判断に迷っている支出をお聞かせください。
個人・法人の別、対象年分、取引の内容、手元の明細が分かると、必要な情報を考えやすくなります。金額だけでなく、何のために、いつ、どのように使ったかが、整理を進める材料になります。
書類が途中でも、分かることと不明なことを分けて伝えられます。毎月の経理から整えたい方は、そのお悩みもお聞かせください。店の事実に沿った記録と判断へつなげるところから、必要な支援を考えていきましょう。
税務監修:税理士 坂根崇真
